2021 年 57 巻 6 号 p. 946-951
【目的】手術を受ける患児が手術室入室時に保護者と離れることで強い不安や恐怖を感じ,興奮状態となることはしばしば経験する.患児が啼泣や興奮した状態で麻酔導入すると,分泌物増加や不規則な呼吸から気道トラブルの原因となり麻酔のリスクが増大する.そこで我々は麻酔導入時の患児の不安を軽減し,安全な麻酔導入を行うために手術室への保護者同伴入室を実施している.保護者同伴入室が患児へ及ぼす影響を検討するために,保護者及び患児へのアンケート調査を実施した.
【方法】2017年4月から10月までに当科で同伴入室を行った患児及び保護者100例を対象とした.手術室入室時の不安度を小児外科医が3段階で評価し,術後1週間目の外来受診時に保護者と5歳以上の患児にアンケート調査を実施した.
【結果】平均年齢4.7歳(1か月~15歳).入室時に不安があった患児は37%で,このうち強い不安があった患児は18%であった.1歳以上6歳未満の幼児群で約半数に不安があり最も多かった.導入時のマスクを当てた時に少し泣いた患児は8%,泣いて暴れた患児は26%で,1歳未満の乳児群で泣く症例が多かった.保護者の不安なしの群(n=85)で患児に不安があったのは31%,保護者の不安ありの群(n=15)で患児に不安があったのは73%で,保護者の不安ありの群で有意に患児の不安ありの率が高かった(P<0.05).術後のアンケート回収率は89%で,保護者の99%が同伴入室して良かったと回答し,5歳以上の患児の81%が保護者同伴により安心したと回答した.
【結論】保護者同伴入室により患児の不安は軽減したが,保護者に不安がある場合はむしろ患児の不安は増強した.