日本小児外科学会雑誌
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57 巻, 6 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
おしらせ
追悼文
挨拶
プログラム
原著
  • ―アンケートによる患者満足度調査―
    杉田 光士郎, 野口 啓幸, 松久保 眞, 村上 雅一, 町頭 成郎, 家入 里志
    2021 年 57 巻 6 号 p. 938-945
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    【目的】当科で施行した逆Y字皮膚切開による臍形成術(VY皮弁)の治療成績及び術式の有用性に関する検討を行った.

    【方法】2004年4月から2018年11月までの15年間に当院で臍ヘルニアの手術を行った191例を対象に,性別,手術時年齢,出生体重,出生週数,合併疾患,手術時間,術後合併症に関して後方視的に検討した.加えて患者満足度調査として5項目からなるアンケートを実施し,結果について解析した.

    【結果】症例191例の内訳は男児94例,女児97例で性差は認めなかった.手術時年齢の中央値は2歳(0.16~15.50)で,2歳が85例(44.5%)と最多であり,就学時前が183例(95.8%)と大多数を占めた.合併疾患は鼠径ヘルニア類疾患が18例(9.4%)と最も多かった.術後合併症としては臍周囲皮膚炎が9例(13.8%)と最も多かった.アンケート回収率は50.0%であり,臍外観に70.6%が「大変満足」と回答した.理想の臍外観の項目は「へこみ」(23.3%)や「大きさ」(20.0%)よりも「全体」が最も多く約半分を占めていた.手術時年齢は満足群の方が有意に高年齢であった(p=0.032).性別に関しては満足群に男児の割合が多い傾向にあった(p=0.007).

    【結論】逆Y字皮膚切開による臍形成術は,比較的簡単で術後満足度の高い術式である.当術式の満足群は年齢が高い傾向にあり,安定した満足度を得るためには手術時期を2歳以降に設定する選択肢があると思われた.現在臍ヘルニアに対する術式は様々であるが,各々の術式により適切な手術時期が異なる可能性もあると考えられた.

  • 田中 夏美, 銭谷 昌弘, 植木 隆介, 中本 志郎, 岡本 拓磨, 大植 孝治
    2021 年 57 巻 6 号 p. 946-951
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    【目的】手術を受ける患児が手術室入室時に保護者と離れることで強い不安や恐怖を感じ,興奮状態となることはしばしば経験する.患児が啼泣や興奮した状態で麻酔導入すると,分泌物増加や不規則な呼吸から気道トラブルの原因となり麻酔のリスクが増大する.そこで我々は麻酔導入時の患児の不安を軽減し,安全な麻酔導入を行うために手術室への保護者同伴入室を実施している.保護者同伴入室が患児へ及ぼす影響を検討するために,保護者及び患児へのアンケート調査を実施した.

    【方法】2017年4月から10月までに当科で同伴入室を行った患児及び保護者100例を対象とした.手術室入室時の不安度を小児外科医が3段階で評価し,術後1週間目の外来受診時に保護者と5歳以上の患児にアンケート調査を実施した.

    【結果】平均年齢4.7歳(1か月~15歳).入室時に不安があった患児は37%で,このうち強い不安があった患児は18%であった.1歳以上6歳未満の幼児群で約半数に不安があり最も多かった.導入時のマスクを当てた時に少し泣いた患児は8%,泣いて暴れた患児は26%で,1歳未満の乳児群で泣く症例が多かった.保護者の不安なしの群(n=85)で患児に不安があったのは31%,保護者の不安ありの群(n=15)で患児に不安があったのは73%で,保護者の不安ありの群で有意に患児の不安ありの率が高かった(P<0.05).術後のアンケート回収率は89%で,保護者の99%が同伴入室して良かったと回答し,5歳以上の患児の81%が保護者同伴により安心したと回答した.

    【結論】保護者同伴入室により患児の不安は軽減したが,保護者に不安がある場合はむしろ患児の不安は増強した.

  • 安部 孝俊, 正畠 和典, 出口 幸一, 銭谷 昌弘, 臼井 規朗
    2021 年 57 巻 6 号 p. 952-958
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    【目的】先天性食道狭窄症(以下,本症)における臨床的特徴を明らかにし,病型や臨床的特徴に関わらずバルーン拡張術が本症に対する治療法として第一選択になりえるかを検討することを目的に本研究を行った.

    【方法】2000年1月から2018年12月までの19年間に,当施設を含む3施設において本症と診断されて治療が行われた症例を対象とし,症例背景や食道造影検査所見,選択された治療方法と治療成績を診療録から後方視的に検討した.

    【結果】症例数は31例で,男児21例,女児10例であった.23例に先天異常の合併を認めたが,うち19例は食道閉鎖症であった.初回治療として20例に対してバルーン拡張術が,2例に対して狭窄部食道切除術が,1例に対して内視鏡的膜切除術が行われていた.一方,8例に対しては治療を行わずに経過観察されていた.バルーン拡張術を施行した20例については1例あたり中央値2(1~6)回拡張術が行われ,うち19例は症状が改善したが,1例はのちに食道切除術が必要であった.食道造影検査画像における狭窄部口側の食道壁がなす狭窄角を比較したところ,食道閉鎖症を合併した症例では合併しない症例に比べて狭窄角は有意に小さかった.しかし,食道閉鎖症の合併の有無でバルーン拡張術の成績に差を認めなかった.バルーン拡張術を施行した症例のうち10例に食道穿孔(疑いを含む)を発症していたが,いずれも保存的に治癒し,狭窄症状も軽快していた.

    【結論】病型や臨床的特徴,食道閉鎖症合併の有無に関わらずバルーン拡張術は本症に対する治療法として第一選択になりうると考えられた.

症例報告
  • 植野 百合, 大津 一弘, 亀井 尚美
    2021 年 57 巻 6 号 p. 959-964
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    輪状細管を伴う性索腫瘍(SCTAT)は性索間質腫瘍の中でもまれな境界悪性腫瘍であり,しばしば女性ホルモンを産生することや,Peutz-Jeghers症候群(PJS)に合併することが知られている.症例は9歳6か月女児.乳房腫大と不正性器出血を主訴に来院した.左卵巣に約11 cm大の漿液性囊胞性病変を認め,エストラジオール(E2)が高値であった.経過観察中に病変は一時的に縮小しE2値も低下したが,その後病変の再増大を認めた.反応性卵巣囊胞を疑い卵巣囊胞部分切除術を施行したところ,病理組織診でSCTATと診断された.SCTATの標準治療は定まっておらず,本症例では妊孕性を温存するため術後7か月時に患側のみの付属器摘出術を施行した.本症例はPJS非合併例であり,非合併例では約20%が悪性の経過をとるとの報告があるため,今後厳重な経過観察が必要である.

  • 児玉 匡, 上野 豪久, 正畠 和典, 出口 幸一, 野村 元成, 阪 龍太, 田附 裕子, 近藤 宏樹, 別所 一彦, 奥山 宏臣
    2021 年 57 巻 6 号 p. 965-970
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)は,乳児期より持続する進行性の胆汁うっ滞により肝不全に至るまれな疾患である.今回われわれは,本邦初報告となるPFIC 4型を含めた2例に対して生体肝移植を行った.【症例1】11歳男児,PFIC 1型.感染性腸炎を契機に急激な増悪を認め肝不全となり生体肝移植を施行した.完全外胆汁瘻を併施したが,移植肝から胆汁排泄が得られず術後6か月で肝不全により死亡した.【症例2】4歳女児,PFIC 4型.肝生検における免疫染色で胆管上皮細胞のBSEP発現は確認できず.PFIC 2型の責任遺伝子は正常であったが臨床的にPFIC 2型としていた.経過中に肝硬変から肝不全に至り生体肝移植を施行.経過は良好で現在術後6年無病生存中である.移植後に改めて行われた遺伝子診断にて,TJP2遺伝子に変異を認めたため,PFIC 4型と診断された.PFICは遺伝子診断による病型判断が肝移植を始めとする治療を行ううえで重要である.

  • 植田 倫子, 石本 健太, 日野 祐子, 岡村 かおり, 林田 真
    2021 年 57 巻 6 号 p. 971-975
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    胃十二指腸動脈より分枝する特異な右肝動脈破格(aberrant right hepatic artery; ARHA)を伴った先天性胆道拡張症に対して,胆囊・拡張胆管切除および肝管空腸吻合を行った.症例は2歳男児,主訴は腹痛と食後の嘔吐で,腹部超音波検査で急性胆囊炎を疑う所見を認めたため,精査・加療目的に当院小児感染症科に入院となった.造影CTでは先天性胆道拡張症(IV-A型)の所見であり,胃十二指腸動脈より分枝し,肝右葉に向かって拡張胆管腹側を走行する副右肝動脈であるARHAを認めた.待機的に胆囊・拡張胆管切除および肝管空腸吻合を行い,ARHAは温存した.術後経過は問題なく,術後7日目に自宅退院となった.術前の血管走行の評価および丁寧な手術操作により,ARHAを温存することが可能であった.

  • 永井 太一朗, 大西 峻, 連 利博, 武藤 充, 矢野 圭輔, 春松 敏夫, 山田 耕嗣, 山田 和歌, 加治 建, 家入 里志
    2021 年 57 巻 6 号 p. 976-980
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    声門下囊胞は比較的稀な疾患である.症例は在胎28週,1,202 gで出生した男児.出生後5日間挿管された.1歳2か月時に上気道炎,クループ症状から呼吸状態が増悪し前医に救急搬送され,心肺停止の状態となったが蘇生された.軟性気管支鏡検査では声門下腔右壁の軽度膨隆のみで,患児が呈した重篤な気道閉塞症状とは乖離しており,経過観察とされた.その後クループ症状が頻回となり,3歳で当科紹介受診となった.造影CTで声門下に5 mm大の囊胞性病変を認め,気管内外の囊胞性病変を想定して,切除手術を施行した.病変は気管外にはなく,気管切開の上,声門下を開けると,囊胞を確認,鋭的に囊胞開窓術を施行した.半年後の気管支鏡検査では左側に微小な囊胞を認めた.その後1年間の経過観察で増大なく,新たな再発病変はないため同部位にレーザー焼灼を施行し,気管切開後1年5か月で気管切開カニューレを抜去した.診療に難渋し示唆に富む声門下囊胞を経験したため,文献を踏まえて報告する.

  • 横井 暁子
    2021 年 57 巻 6 号 p. 981-985
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    先天性気管狭窄症(CTS)の経過観察例では,成長に伴い労作時呼吸苦が問題になることがある.労作時呼吸苦の評価に6分間歩行検査(6MWT)が有用であった2例を経験した.症例1 6歳男児.重篤な換気不全の既往はなし.成長に伴い友達と一緒に動き回れないことが問題となり,6歳時に6MWTを施行,351 mと低値であり気管形成術を施行した.術後は問題なく経過し,6MWTは術後26日で451 m,7か月後には541 mと改善した.症例2 8歳男児.3歳時にRSウイルス(RSV)感染でECMO導入の既往はあったが,以後挿管歴はなし.就学後から運動時の呼吸苦が強くなり,6MWTを施行,390 mと低値であり,気管形成術を施行した.術後は問題なく経過し,6MWTは術後26日に554 mと改善した.2例とも術前の歩行後SpO2は低下せず,術後も軽度低下のみで,自己のペースで行える6MWTはCTS児においても施行可能であった.

  • 福原 雅弘, 佐藤 智江, 大西 峻, 飯田 則利, 江角 元史郎
    2021 年 57 巻 6 号 p. 986-991
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    症例は在胎36週6日,3,000 gで出生した男児.日齢2に空腸閉鎖症の診断で一期的吻合を行った.術後2日目より経腸栄養を開始し,日齢15に中心静脈栄養から離脱したが,日齢17頃から灰白色便と直接ビリルビン優位の黄疸を認めたため利胆薬を開始した.日齢22に退院としたが,黄疸が持続したため精査したところ胆道閉鎖症を否定できなかった.日齢59に試験開腹を行い胆道閉鎖症(III-b1-ν)と診断し,肝門部空腸吻合術を施行した.術後は速やかに減黄し1歳の現在まで黄疸はなく経過良好である.小腸閉鎖症術後の胆汁うっ滞はしばしば経験するが,胆道閉鎖症との鑑別は困難であり,精査・治療介入が遅くなることが指摘されている.今回小腸閉鎖症に合併した胆道閉鎖症の本邦報告例および当科における小腸閉鎖症症例を検討した結果,生後1か月過ぎても遷延する直接ビリルビン優位の黄疸は胆道閉鎖症を念頭に置いた精査が必要であると考えられた.

  • 水島 穂波, 筒野 喬, 桑原 強, 下竹 孝志
    2021 年 57 巻 6 号 p. 992-996
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    上肢骨折を機に診断された遅発性先天性横隔膜ヘルニアの1例を経験したので報告した.症例は4歳女児.遊戯中に左上肢を骨折,術前の胸部レ線で肺野に腸管ガス像を認め,横隔膜ヘルニアが疑われ当科紹介となった.胸部単純CTでは,左横隔膜背側から左胸腔に腸管,脾臓,膵尾部の脱出を認め,消化管造影検査では,胸腔内に空腸から結腸脾弯曲の脱出が描出された.外傷術後14日目,待機的に横隔膜修復術を施行した.左肋弓下切開にて開腹,Bochdalek孔から胸腔内に空腸から下行結腸,膵臓,脾臓が嵌入していた.ヘルニア門は3.0×1.3 cmで,腫大した脾臓の還納に難渋し,欠損孔を切開し還納した.遅発性先天性横隔膜ヘルニアは予後良好とされるが,狭小なヘルニア門から脱出した腸管の絞扼・捻転や脾臓の鬱血・腫大などで還納に難渋することがあり,根治術の際は,無症候性でも術中の偶発損傷に備えて施術に当たることが重要と考えられた.

  • 佐野 信行, 神山 隆道, 仁尾 正記
    2021 年 57 巻 6 号 p. 997-1001
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    日齢0の女児.在胎25週の胎児超音波検査で右上腹部に直径30 mmの囊胞性病変と肝内胆管拡張を認め,先天性胆道拡張症の出生前診断となった.在胎37週4日に体重3,016 gで出生,超音波検査で直径50 mmの総胆管と肝内胆管拡張の増悪を認めた.便色が生後2~3日で濃緑から灰白色となったため日齢10に手術を行った.囊腫状総肝管から右肝管へ認めた膜様狭窄部を形成し右肝管外側も切り上げ,左肝管の高度索状狭窄には涙管ブジーを挿入して外側壁を切開し管腔を開放した.Roux-en Y法で胆道再建を行った際,右肝管は腸管吻合が可能だったが,左肝管は狭窄部の切開開放部が深部に位置し粘膜吻合が不可能であり,胆道閉鎖症に対する肝門部空腸吻合(葛西手術)に準じた吻合を行った.術後経過は良好で第13病日に退院し,11歳現在まで合併症は皆無である.肝管空腸吻合が困難な場合,肝門部空腸吻合は考慮すべき術式と思われた.

  • 桝屋 隆太, 中目 和彦, 楯 真由美, 黒木 純, 河野 文彰, 市原 明子, 池田 拓人, 武野 慎祐, 七島 篤志, 家入 里志
    2021 年 57 巻 6 号 p. 1002-1007
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    2歳女児.3日前から反復する嘔吐で加療されていた.急激な腹部膨満から消化管穿孔を疑われ当院へ搬送された.来院時顔面蒼白,活気不良,末梢冷感著明,脈拍数200/分,血圧60/42 mmHg,呼吸数43/分とショックを呈していた.腹部造影CTで多量のfree airおよび腹水を認め,胃軸捻転の所見を認めた.胃軸捻転による消化管穿孔と診断し緊急腹腔鏡手術を行った.腹腔鏡下に胃軸捻転を解除したが,穿孔部位が同定困難で開腹へ移行した.胃体上部大弯に付着した大網を剥離したところ同部位にピンホール状の穿孔を認めた.同部位を楔状に切除し胃を腹壁に固定した.遊走脾は認めなかった.術後DIC治療と胃蠕動改善に日数を要したが徐々に回復し,術後19日目に軽快退院した.その後再発なく経過している.急性胃軸捻転に伴い胃穿孔を生じた報告が散見される.重篤化して急激な経過をたどる報告もあるため,迅速な診断と治療を必要とする.

  • ―自験例2例の報告,および既報告50例の検討―
    加藤 翔子, 金子 健一朗, 福山 貴大, 松下 希美, 佐野 力
    2021 年 57 巻 6 号 p. 1008-1011
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    先天性前胸部皮下皮様瘻孔は左胸鎖関節部に好発し,扁平上皮と皮膚付属器で構成される瘻孔だが,その疾患概念は未だ普及していない.症例は10か月男児と1歳女児で,両者とも出生時より左胸鎖関節部に皮膚孔を認め,発赤腫脹を伴ったため受診された.超音波検査で瘻孔直下に囊胞を認めた.瘻孔に色素を注入し剥離すると,1 cmの深さで囊胞を形成して盲端となっていた.病理組織学的に瘻孔内腔は扁平上皮で覆われており,囊胞壁には毛囊・脂腺・汗腺を認めた.自験例含む報告例52例を検討すると,繰り返す感染が特徴で,術後再発が1例みられたので,瘻孔の走行確認と周囲の皮膚付属器を含めた完全摘出が必要である.瘻孔の深部で囊胞または結節となって拡張している場合が多く,深部組織を遺残させないことが肝要である.自験例では瘻孔切除時の色素注入が有用であった.

  • 中原 康雄, 大倉 隆宏, 浮田 明見, 花木 祥二朗, 石橋 脩一, 高橋 雄介, 橋本 晋太朗, 後藤 隆文, 青山 興司
    2021 年 57 巻 6 号 p. 1012-1015
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    症例は胆道閉鎖症の女児である.日齢57に肝門部空腸吻合を施行した.門脈は本幹から3分岐する型に近く,門脈左右枝が分岐してすぐに前枝と後枝に分岐していた.結合組織塊は門脈左枝と前区域枝の間に入っていたが,その背側から門脈後区域枝に沿って索状物が分岐していた.南回り胆管が索状になっていると推察された.結合組織塊は門脈左枝と前区域の間で肝被膜を損傷しないレベルで切除した.また後区域に向かう索状物は門脈後区域枝内側の肝被膜レベルまで剥離して切除した.肝門部空腸吻合術は挙上空腸の腸間膜反対側に2か所の吻合口を設け,門脈左枝と前区域枝の間,そして後区域枝と前区域枝の間の2か所で施行した.速やかに減黄が得られ,短期ではあるが経過は良好である.本症のような肝門部解剖が特殊な場合には,2か所の肝門部空腸吻合も術式の選択肢となりうると考えられた.

  • 遠藤 耕介, 佐藤 正人, 東尾 篤史, 飯森 啓, 澤田 賢治, 東 俊二郎, 栗田 亮, 諸冨 嘉樹
    2021 年 57 巻 6 号 p. 1016-1021
    発行日: 2021/10/20
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    症例は35歳男性.生後69日に胆道閉鎖症に対してKasai手術(逆流防止弁付き空腸間置の十二指腸再建)を施行された.術後経過は良好だったが,22歳時に通院を自己中断した.34歳時に黄疸を指摘され当院消化器内科に紹介となった.腹部CTで肝内胆管拡張を認め,吻合部狭窄の診断で内視鏡的逆行性胆管造影を試みるも吻合部が同定されなかった.黄疸が増悪し肝移植可能な他院紹介となったが,紹介先で経皮経肝胆道ドレナージが施行され減黄が得られた.当院で外瘻管理を行っていたが,発熱や肝機能障害を繰り返した.嘔吐を認めるようになり上部消化管内視鏡を施行,十二指腸に腫瘍を認め,CTで多発肝腫瘍・胸腹水貯留を指摘された.胆汁・胸腹水細胞診,超音波内視鏡ガイド下生検にて肝内胆管癌と診断,化学療法を行うも反応は不良で34歳の再診から10か月で永眠された.胆道閉鎖症術後の胆管癌は予後不良である.自己肝長期生存例では発癌を考慮した経過観察が必要と考えられた.

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