2022 年 58 巻 6 号 p. 942-945
症例は8歳男児.自転車走行中に転倒し,ハンドルのブレーキレバーが右前胸部に刺さり受傷した.ドクターヘリ要請となり,創部より胸腔内へドレーンが留置され,当院へ搬送された.バイタルサインは安定しており,体表観察で右鎖骨中線上第5肋間に2 cmほどの刺創を認め,同部位のドレーンから少量の血性排液を認めた.CT検査より,外傷性血気胸,右下葉肺挫傷Ib(rLL)型と診断し,同日,胸腔鏡補助下肺縫縮術,胸腔ドレナージ術を施行した.術後経過は良好であり,術後8日目に退院した.胸部外傷に対する胸腔鏡手術は,胸腔内の観察に優れ低侵襲な手術が可能であり,加えて早期に日常復帰が可能なことから,成人例では有用と考えられているが,小児例の報告は少なく適応についても明らかではない.血行動態が比較的安定した症例で,穿通性外傷や持続性血気胸,横隔膜損傷が疑われる場合は胸腔鏡補助下手術が可能であり,本症例はその良い適応と考えられた.