2022 年 58 巻 6 号 p. 939-941
症例は11歳男児.臍窩の皮膚をつまんで遊んでいたところ翻転し還納不能となったため小児外科外来を受診した.初診時,臍窩の皮膚は翻転し,うっ血を伴っていた.外来で意識下に用手的整復を試みたが,患児の苦痛が強く整復困難であったため,全身麻酔下に整復を行った.整復後の経過は良好で翌日退院した.整復後9か月経った現在も再発なく経過している.臍窩の皮膚が翻転し陥頓した報告例は会議録を除き本邦に1例のみである.その病態は翻転した臍窩の皮下組織が臍縁と臍窩の瘢痕組織により挟まれることでうっ血を呈したと考えられる.臍窩の皮膚の翻転を意識下に行うことは困難であるが,本症例では日ごろから臍窩の皮膚を引っ張る癖があった.その結果臍窩の瘢痕組織が伸展しやすくなることで翻転の発症に寄与したと考えられた.