日本小児外科学会雑誌
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原著
腹部リンパ管奇形(リンパ管腫)28例の検討と感染・炎症例へのドレナージの有効性
臼井 秀仁新開 真人北河 徳彦望月 響子八木 勇磨奥村 一慶川見 明央大関 圭祐
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2022 年 58 巻 7 号 p. 966-971

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抄録

【目的】腹部リンパ管奇形(lymphatic malformation,以下LM)は腹部リンパ管腫とも呼ばれる稀な疾患で,急性腹症や腹部膨満を発症し,緊急の診断・処置を迫られることがある.一方で無症状のまま発見される場合もあり,本疾患の適切な治療方針は確立されていない.当院での経験を検討し,特に感染・炎症例へのドレナージの有効性を報告する.

【方法】1997~2016年の20年間に当院で腹部リンパ管腫(腹腔内,後腹膜)の病名で加療した患者28例を対象とした.診療録を後方視的に検討した.

【結果】診断時年齢は中央値で3歳であった.有症状例は24例で,発症機転は感染・炎症10例,囊胞内出血4例,非感染非出血腫大2例,捻転2例,その他6例であった.有症状24例に対し介入を行った.感染・炎症を除く14例中13例(92.9%)で摘除術を施行した.感染・炎症の10例は,1例に緊急摘除を行ったが,9例で抗生剤単独あるいはドレナージを加えることで感染は沈静化した.その後,1例がイレウスを合併し手術を要したが,8例は待機的アプローチを選択でき,硬化療法1例,摘除2例を行い,他の5例では介入を要さず退縮した.その後の再燃は認めていない.

【結論】有症状の腹部LMは摘除の適応であるが,感染・炎症例では抗生剤単独あるいはドレナージを加えることにより外科摘除なしで退縮へと繋げる待機的アプローチも選択肢のひとつとなりうると考えられた.

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