2024 年 60 巻 1 号 p. 50-56
1歳3か月,男児,感冒にて近医受診した際に腹部腫瘤を指摘され,精査目的に当科紹介となった.エコーで左腎に多房性囊胞性腫瘤を認め,また胸部単純X線にて右気胸の疑いがあった.胸腹部MRIを施行したところ,右気胸と思われたのは肺囊胞性病変であり,また両側囊胞性腎腫瘍を認めた.それぞれ切除術を行う方針とし,まず右肺上葉切除術を先行した.病理組織学的所見はpleuropulmonary blastoma(PPB)I型が退縮した病変である可能性が最も考えられた.2か月後に左腎摘出術および右腎腫瘤核出術を施行し,病理組織はcystic nephromaの所見であった.遺伝子解析を施行したところ,DICER1症候群の診断となった.多臓器での腫瘍を認めた際はDICER1症候群の可能性も考える必要がある.