2024 年 60 巻 6 号 p. 939-943
乳腺膿瘍は小児では稀であり,複数回の排膿処置を要することがある.今回,乳腺膿瘍の排膿後に十全大補湯を使用した症例を経験したので報告する.症例は10歳女児.やせ型で,アトピー性皮膚炎の加療中.発熱,左乳房腫脹を主訴に当院を受診した.発赤と圧痛を伴う左乳房腫脹があり,胸部造影CTで左乳房に膿瘍を認めた.左乳腺膿瘍の診断で入院となり,抗生剤投与を開始した.入院3日目に乳輪縁の2か所で自壊したが,十分な排膿が得られず,入院5日目に切開排膿し,ドレーンを2本留置した.術直後から十全大補湯の内服を開始し,入院6日目には排膿はなく,1本のドレーンは押し出される形で抜去された.入院7日目に残りのドレーンも抜去し,退院となった.十全大補湯は術後8週目まで継続し,再発はなかった.本症例は気血両虚を伴い,十全大補湯の使用は適切であった.十全大補湯により,排膿後からの治癒を促進できたと推測された.