2025 年 61 巻 6 号 p. 943-946
症例は3歳男児.在胎26週926 gで出生.生後3か月時,鼠径ヘルニアが疑われ,超音波検査にて鼠径部へ膀胱の脱出を認め,左側膀胱ヘルニアと診断した.1歳3か月以降,鼠径部に小鶏卵大の膨隆を認めたが,超音波検査にて膀胱の脱出は消失し腸管脱出のみとなった.膀胱ヘルニアであったという経過と超音波検査所見で腹膜鞘状突起の開存や精索の肥厚を伴わないということより術前から内鼠径ヘルニアを疑った.3歳10か月時,腹腔鏡検査にて左側内鼠径ヘルニアと診断,鼠径部アプローチにてiliopubic tract repair法で内鼠径ヘルニア修復術を行った.小児の鼠径ヘルニアはほとんどが外鼠径ヘルニアであり,内鼠径ヘルニアは非常に稀である.膀胱ヘルニアで発症し,術前より内鼠経ヘルニアを疑い,腹腔鏡にて診断し,治療を行えた小児内鼠経ヘルニアの1例を経験したので報告する.