2026 年 62 巻 1 号 p. 61-64
症例は5歳男児.発熱と左陰囊の腫脹,疼痛を主訴に当科を紹介受診した.左陰囊内リンパ管腫感染を疑い抗生剤加療を開始したが,翌朝発赤腫脹疼痛が増悪し緊急ドレナージ術を施行した.ドレナージ後は速やかに症状が改善した.炎症鎮静化1か月半後に左陰囊内囊胞性腫瘍摘出術を施行したが,高度癒着があり剥離に難渋した.囊胞内容液はリンパ球主体で,病理組織学的に陰囊内リンパ管腫と診断した.術後リンパ漏を合併し,左陰囊が緊満してQOLの低下をきたした.術後1か月後もリンパ漏が改善せず,越婢加朮湯を開始したところ1週間で陰囊の緊満が消失した.越婢加朮湯は半年間内服して終了し,術後3年半再発は認めていない.越婢加朮湯には体内の水分の不均衡を正常化する利水作用があり,正常なリンパ液の流れを促進してリンパ管奇形病変の縮小につながると考えられている.利水作用が術後リンパ漏にも有効である可能性が示唆された.