2026 年 62 巻 6 号 p. 1007-1013
【目的】我々の3施設で経験した出生前診断された孤立性肝囊胞の症例を集積し,その臨床経過から適切な治療方針について検討することを目的とした.
【方法】2013年1月から2022年12月までの10年間に我々の3施設で経験した出生前診断された孤立性肝囊胞症例を検討の対象とした.診療録に基づいて,症例の背景,症状,治療法,臨床経過,転帰を後方視的に検討した.
【結果】対象となった症例は全部で6例であった.性別は男児2例,女児4例で,出生前診断された時期の中央値は在胎31週(28~38週)であった.在胎週数の中央値は40週(38~41週)で,出生時体重の中央値は3,302 g(2,826~3,604 g)であった.6例中1例に卵円孔開存の合併を認めたが,他の5例には先天異常の合併を認めなかった.いずれの症例も出生前の胎児超音波検査および出生後の腹部超音波検査にて直径30~70 mmの単房性囊胞を認めた.造影CTまたはMRI検査では囊胞内に隔壁構造や胆道系との交通を認めなかったため孤立性単純性肝囊胞が強く示唆された.出生後の血液検査では全例で肝胆道系の検査値に異常を認めず,消化器症状や呼吸器症状も認めなかった.1例では腹腔内臓器の圧排を懸念して日齢47に腹腔鏡下肝囊胞切除術を施行したが,他の5例に対しては経過観察を行い,腹部超音波検査で囊胞の経時的な縮小を認め,最終的にはほぼ消失したことを確認した.
【結論】出生前診断された孤立性肝囊胞では,出生後に無症状例の治療方針として,保存的に経過観察することを考慮すべきと考えられた.