2026 年 62 巻 6 号 p. 1079-1085
思春期に発生する精巣胚細胞腫瘍(germ cell tumor: GCT)に下大静脈(inferior vena cava: IVC)腫瘍栓を伴う症例は極めて稀であり,小児例の報告はない.症例は初診時14歳の男児.非セミノーマ性精巣GCTに多発遠隔転移および広範なIVC腫瘍栓を認めた.高位精巣摘除術後にBEP療法4コースを施行し,腫瘍マーカーは正常化,画像上IVC腫瘍栓は著明に縮小したが,後腹膜リンパ節と肝転移巣の残存を認めた.思春期症例であるため成人の治療戦略に準じ,成人外科の協力のもと後腹膜リンパ節郭清と肝部分切除を実施した.術中IVC内に腫瘍栓は認めずIVC切除は施行しなかった.最終的に切除標本に生存腫瘍細胞は認めず,病理学的完全奏効であった.本症例は,IVC腫瘍栓を伴う小児精巣GCTの初報告例である.思春期発症の精巣GCTは成人型に近い腫瘍学的特徴を有するため,成人領域のガイドラインに準じた治療が推奨される.本症例に対する治療戦略の決定には,多診療科連携が有用であると考えられた.