抄録
肺癌の外科治療過程における気管支鏡は, 術前, 術中, 術後の3期に分けられる。術前の気管支鏡は, 第一に肺癌の確定診断を目的として行う。さらに気管支鏡所見より内視鏡的臨床病期の判定, 手術適応と術式の選択を行うべきである。筆者らの内視鏡的な術式の選択と手術手技の一致率は, 粘膜主体型が92.6%, 粘膜下主体型が84.4%であった。術中の気管支鏡は, 気管・気管支形成術の切除範囲の診断とまれにポリープ型扁平上皮癌に発症する対側気管支の腫瘍塞栓の腫瘍塊摘出に使用した。術後のBronchial toiletは, 第1病日から第4病日の間に86.9%の症例に行われていた。肺葉切除後の残在気管支の変形狭窄は, 縫合方法とstumpの長さに関係していた。再発腫瘍の気管支鏡的初期像は, すべての組織型において粘膜下主体型所見を示していた。断端縫合部の肉芽組織は, 結節隆起型の腫瘍に似た像を示していた。断端部気管支瘻は, 気管支鏡的に微小な瘻孔を指摘することが困難であった。気管支瘻の種々の症状の発症以前, あるいは明らかな瘻孔として気管支鏡的に指摘可能になる以前に, Fluorescein assisted endoscopic imaging (FAEI)を行うことにより, 断端部周囲粘膜の虚血性所見から, 瘻孔発生の危険性を推測できると考えた。肺癌患者の術後の気管支鏡を用いた経過観察は, 胸部X線写真と同様に定期的に行うことにより, X線写真では知りえない情報を得ることができる。