気管支学
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気管支鏡による細菌, 細胞の検索(内視鏡所見からみた気管支の慢性炎症性疾患)(第 11 回日本気管支学会総会特集)
大串 文隆安岡 劭
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1988 年 10 巻 5 号 p. 546-552

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抄録

気管支鏡を用いて気道の各レベルから採取した検体(洗浄液中)の細胞, 細菌の慢性気道疾患, 特に感染症の病態解析や診断における有用性を検討した。細胞分析は, 気管支肺胞洗浄液(BALF), 気管支洗浄液(BLF)を用い行った。慢性気道疾患患者では, 多核白血球, 特に好中球の増加を主体とする総細胞数の増加がBLF, BALFの両者でみられ多核白血球の分析が疾患の活動性の決定, 病型分類に有用と考えられた。本症では, BLF, BALFの細胞像の変化は類似していた。菌検索は, 喀痰, 気管吸引(TA)液, BLF, BALFらの気道各レベルを反映する検体で検討し, 菌をCFU/mlで表現した。正常者のBLF中に低濃度の常在菌が証明された。これらの菌が上気道からの混入によるものか下気道に存在するかの問題は今後検討する必要がある。慢性気道感染症の未治療群では, 非病原性菌も正常者に比し増加しており, 治療群では, これらの菌が正常者と同程度にみられた。病原性菌をみると, 喀痰, TA, BLF, BALFで菌が一致するもの, 喀痰, TAのみに菌が陽性のもの, 喀痰と他の検体間に菌の不一致がみられるものなどがみられた。これらの成績から, 気道各レベルからの洗浄液中の菌検索により, 気道感染症の活動度診断や, 起炎菌の決定に加えて, 気道感染症の局在や広がりが明らかになると考えられる。慢性気道感染症に対する抗菌剤の治療効果は洗浄液中の細胞像よりも細菌叢に鋭敏に反映されていた。

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© 1988 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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