1991 年 13 巻 3 号 p. 229-234
咳嗽は, 日常診療において非常に多い症状であるが, その発生メカニズムや治療効果に対する検討はあまり進んでいない。そこで我々は, 健常者9人における酒石酸とカプサイシン誘発咳嗽に対する臭化イプラトロピウム, プロカテロール, ナファゾリンの吸入効果を検討した。咳感受性の指標として, 咳誘発物質吸入により5回以上咳が出た時点の吸入濃度を咳閾値として測定した。酒石酸あるいはカプサイシンの咳閾値は, イプラトロピウム, プロカテロール, ナファゾリンにより変化しなかった。以上より, 咳感受性はβ_2交感神経, ムスカリン性副交感神経, α_2交感神経により影響を受けず, 気管支拡張剤は健常者の気道における誘発咳嗽に対しては無効であることが示された。