1992 年 14 巻 1 号 p. 38-43
肺門・中間層部肺癌は, 一般に気管支壁内に限局しているかぎり, リンパ節転移や遠隔転移は非常に稀であり, 治癒できる可能性が高い癌といわれている。今回我々は, 浸潤が気管支軟骨の内側に留まっていながら肺門リンパ節に転移の認められた亜区域支発生の扁平上皮癌の1例を経験したので報告する。症例は74歳男性。早期喉頭癌の放射線治療の外来経過観察中, 左下葉に異常陰影を認め, 気管支鏡検査を施行。右B^3aにポリープ型の扁平上皮癌を認め, 右上葉切除術を施行された。切除標本では, 病巣は直径5mmで気管支軟骨の内側に留まっていたが, 肺門リンパ節(#11)に転移を認め, p-T1N1M0原発性肺癌と診断された。喉頭癌の肺転移との鑑別が困難であったが, 喉頭癌も早期であり, 現在まで局所再発がないことなどから臨床的に重複癌と考えられた。