気管支学
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気管支鏡にて診断された肺癌術後気管支断端放線菌症の 1 例
武内 浩一郎市川 弥生子桔梗 伸明慶長 直人山根 章萩原 弘一大石 展也四元 秀毅矢崎 義雄岡 輝明
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1992 年 14 巻 1 号 p. 44-48

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抄録
症例は64歳男性。胸部X線写真にて右上肺野に結節影を指摘され, 東大胸部外科において右上葉切除術を施行した。術後診断は右S^3原発扁平上皮癌T_1N_0M_0であった。術後1年半頃より, 発熱, 胸痛, 咳嗽が出現し東大第3内科へ入院した。入院時胸部X線写真にて, 上葉切除後の胸腔内に気腔を認め, 気管支断端瘻を疑い, 気管支鏡検査を施行した。気管支断端は, 粘膜が発赤腫脹し, ポリプロピレン縫合糸が露出, 縫合糸には白苔が付着していた。生検した白苔から放線菌菌塊を認めた。又, 気管支洗浄液からメチシリン耐性ブドウ球菌を検出した。気管支造影では, 明らかな気管支瘻は証明されなかった。バンコマイシン, アミノベンジルペニシリン, クリンダマイシンを投与し, 自覚症状および気管支鏡所見の改善を得た。気管支鏡検査にて放線菌塊を証明した報告は本邦では4例目であり, 又, 肺切除後気管支断端縫合糸への増生の報告は初めてである。気管支断端縫合糸へアスペルギルスが増生する事は知られているが, 今後は放線菌にも留意する必要があると考える。
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© 1992 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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