抄録
FK-506の移植肺における気管支吻合部の創傷治癒に及ぼす影響について気管支粘膜血流量の変動を観察し検討した。雑種成犬の左肺移植を行い,免疫抑制剤としてFK-506を0.1mg/kg連日筋注した.気管支内視鏡下に気管分岐部と第2気管支分岐部の2点の気管支粘膜血流量をレーザー組織血流計を用いて測定し,気管分岐部に対する左第2気管支分岐部の比(L/C)を算定した。正常犬のL/C比は1.05±0.24(n=11)であった。術直後は0.57±0.09(n=9)と有意(P<0.01)に低下したが,術後3週目には1.03±0.10(n=6)に回復した。3週目において,軽度の拒絶反応で0.98±0.11(n=4)であったが高度の拒絶反応では0.56±0.03(n=2)と有意の低下(P<0.01)がみられた。以上からFK-506の投与下では気管支粘膜血流量は3週間で回復し,軽度の拒絶反応は気管支粘膜血流量に影響しないことが判った。