1994 年 16 巻 6 号 p. 539-544
左右上葉切除後の残存気管支変形と気管支断端閉鎖法および断端可視軟骨輪の長さ(R)との関係について検討した。対象は上葉切除術後3ヵ月以上を経過し, 気管支断端精査あるいは呼吸器症状の原因検索を目的に気管支鏡検査を施行した肺癌患者35例(右上切18例, 左上切17例)である。残存気管支の変形は, 右上葉切除例では中間幹あるいは中葉支入口部の偏平化とし, 左上葉切除例では底幹入口部軟骨の突出とした。右上葉切除例ではSweet法に準じ断端縫合線が残存気管支と平行になるTransverse法(T法)と垂直になるVertical法(V法)とで変形の発生頻度に差はなかった。左上葉切除例での変形頻度は, T法+R=1リングでは4/4例(100%), V法+R≧2リングでは1/5例(20%)で両者間で有意差を認めた(p<0.05)。左上葉切除例では気管支断端閉鎖はV法でおこない, 断端可視軟骨輪を2リング以上残すことにより, 底幹入口部の変形が軽減されると考えられた。