1997 年 19 巻 5 号 p. 400-404
症例は79歳男性で, 30年前に左膿胸で手術を受け, 1994年6月肺癌で右下葉切除術後, 50Gyの放射線療法を施行された。右膿胸, 慢性呼吸不全で2度入院し, 以後, 在宅酸素療法を受けていた。1996年8月17日, 心肺停止の状態で当院に搬送され, 心拍動は再開したが脳死状態で人工呼吸器管理となり, 8月26日第2-3気管軟骨輪で気管切開を施行した。気管切開後第87日の11月18日, 口腔内より突然大量出血した。気管カニューレのカフ内圧を上げることにより一時的に止血できたが, 21日再び大量出血して死亡した。剖検所見では気管切開孔より1.8cm末梢で気管と腕頭動脈との間に瘻を形成していた。自験例を含めて検索しえた文献的報告例は29例で, 出血機序による検討では"extratracheal type"が5例, "endotracheal type"が21例であった。従来, 予後不良であったが最近では救命例の報告が増加している。