気管支学
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気管支分岐異常を伴う肺癌に対する気管支形成術の経験
辻 博治吉永 恵古川 正人酒井 敦宮下 光世佐々木 誠徳永 祐二木下 明敏綾部 公懿
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1998 年 20 巻 5 号 p. 401-407

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抄録

右上葉気管支入口部に進展した肺門部癌に対する手術術式は, 右上葉管状切除を選択される場合が多いが, 気管分岐部レベルより分岐した右肺尖支による気管支分岐異常のため, 気管軟骨輪を切り込み, 下部気管に中下葉を再建した症例を経験した。症例は46歳, 男性。喫煙指数920。1997年3月, 咳嗽, 喀痰を主訴として近医受診し, 胸部レントゲン上, 右肺門部腫瘤陰影を指摘され精査加療のため入院となった。胸部レントゲンでは右肺門部に5.0×4.0cmの腫瘤陰影を認め, 胸部CTでは腫瘍による右上葉支の閉塞像, 縦隔リンパ節腫大が指摘され, 同時に気管分岐部レベルより分岐する右肺尖支(B^1, 第1上葉支)が描出された。気管支鏡では右肺尖支は気管分岐部レベルの気管右側壁から分岐しており, 同部への腫瘍浸潤を疑う所見は見られなかった。上葉気管支(B^<2+3>, 第2上葉支)は, 内腔にポリープ状に突出した灰白色の腫瘍で閉塞していたが, 中間幹に変化は認められなかった。気管支鏡下生検にて扁平上皮癌の診断を得た。肺動脈造影では, A^1が右主幹より直接分岐し, 上幹動脈(A^<2+3>)の尖形閉塞, 上行動脈(A^2b)の圧排偏位像が認められた。手術は気管右側壁に2軟骨輪切り込んだ右上葉管状切除後, 下部気管に中間幹を端々吻合, 肺動脈は一部合併切除しパッチ再建を行った。術後病理病期はp-T3N2M0 IIIA期であった。

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© 1998 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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