1998 年 20 巻 5 号 p. 419-424
症例は63歳の男性。平成9年2月頃から鼻閉感, 膿血性鼻漏が出現し, 当院耳鼻科を紹介受診した。抗生物質治療を受けたが軽快せず, やがて湿性咳嗽, 微熱, 両側耳痛, 難聴等が出現し, 4月入院となった。汎副鼻腔充満像, 気管支潰瘍, 顕微鏡学的血尿が認められ, 鼻粘膜病理組織像, C-ANCA価高値より全身型Wegener肉芽腫症と診断した。prednisoloneとcyclophosphamide標準治療によりC-ANCA価は著減し, 鼻腔内粘膜病変は比較的速やかに軽快したが, 顕微鏡学的血尿および気管支粘膜病変は遷延したためにmethylprednisoloneのpulse療法を施行した。C-ANCA価は確定診断に有用であった。しかし, 本症例の気管支粘膜病変は遷延化し, C-ANCAは気道病変の活動性を反映せず, 治療効果の指標とはならなかった。一方, 気管支鏡検査はその活動性の把握, 治療効果の判定に極めて有用な検査であった。