抄録
症例は73歳, 男性。1971年より結核性膿胸のため当科外来で定期的に経過観察を行っていた。1996年12月より左胸背部痛が出現し, その後疼痛増悪, 左前胸部から左腹部にかけて皮下腫瘤が認められたため1997年4月精査目的に入院した。胸部CT上, 左胸腔内に突出する腫瘤陰影と同部位の肋骨の骨融解像を認め, 胸水細胞診及び内視鏡下生検より胸壁腫瘍(扁平上皮癌)と診断した。全身状態不良のため放射線治療(50Gy)を施行し, 腫瘍の縮小と症状の改善が認められた。慢性膿胸に合併した胸壁原発悪性腫瘍のなかで扁平上皮癌は悪性リンパ腫に次いで多いとされているが, 報告例は比較的稀である。また我々は胸腔内の経過観察及び診断確定に気管支鏡を使用し, その柔軟性, 低侵襲性よりベットサイドでの臨床応用が期待できるものと考えられたため併せて報告する。