2004 年 26 巻 8 号 p. 757-761
気管支鏡検査前の最も重要なリスクマネージメントは適切なインフォームドコンセント取得である. すなわち本検査が必要である理由(目的), 検査方法, 起こりうる合併症などを十分に説明し, 可能な限り文書で同意を取る必要がある. 検査自体は, 安全で苦痛のない検査を目指すべきであり, この目的のためには服薬状況や薬物アレルギーの問診, 心肺肝腎機能などの患者情報の収集, さらには局所麻酔剤や鎮痛剤など前投与薬剤の選択と投与方法の工夫が要求される. 感染対策としては, 被検者に使用する検査器具を確実に消毒するだけでなく, 施行者への感染対策にも配慮する必要がある. 検査にあたっては生検など観血的処置が必要であったり患者の全身状態が悪い場合もあり, 常に重篤な合併症発生の可能性を念頭に入れた対策を行うことが重要である. すなわち検査施行者が大出血など重大な合併症の起こりうる状況とその対処法に習熟するだけでなく, 管理者は病院全体のシステムとしての問題発生時の対応(人的な応援体制や救急カートの整備, 事故発生後の対応方法など)を確立しておかなければならない. 検査後には注意事項を適切に伝達して合併症発生の早期発見に努めるとともに, 検査結果の報告を確実に行うシステム作りも必要である. 気管支鏡検査の危機管理としては, 個人の技量, 知識のレベルアップ以外にも, 説明文書や麻酔法の工夫など診療科単位で整備する必要のある事項, 問題発生時の危機管理など病院全体で取り組むべき問題がある. 気管支鏡検査を安全に行うには, 個人の技量, 経験と病院全体のサポート体制を考え併せ, それに応じた手技の内容を決定することが重要である.