気管支学
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アスベスト検診要精検者に対する呼吸器内視鏡検査の有用性
福岡 和也上坂 亜由子栗林 康造三宅 光富宮田 茂中嶋 泰典飯田 慎一郎延山 誠一田村 邦宣山田 秀哉村上 亜紀多久和 輝尚松本 成司奥村 好邦田中 文啓長谷川 誠紀中野 幸司
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2007 年 29 巻 3 号 p. 177-185

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抄録

目的.アスベスト検診における呼吸器内視鏡検査の有用性について検討した.方法.2005年7月から2006年3月までの間,アスベスト検診目的で当施設を受診した132名を対象とした.検診受診歴に基づき,受診者を一次検診受診者群と二次検診受診者群とに分類した.前者は初回受診者76名で,後者は他施設での一次検診にて要精査と判定された受診者56名で構成された.アスベスト曝露歴聴取と胸部単純X線検査後,胸部CT検査を施行し,胸部悪性腫瘍を疑う症例を中心に呼吸器内視鏡検査を施行した.結果.両群間で年齢・性別分布に有意差を認めなかった.両群とも70%以上の症例が職業性曝露歴を有していた.全受診者中110名(83%)に画像上異常所見を認めた.アスベスト関連疾患は,延べ90例(68%)に発見され,その内訳は胸膜プラーク60例,肺線維症13例,肺癌5例,良性石綿胸膜炎4例,円形無気肺4例,びまん性胸膜肥厚2例,悪性胸膜中皮腫2例であった.肺癌および悪性胸腹中皮腫の発見率は,それぞれ3.8%,1.5%であった.呼吸器内視鏡検査は15例に施行され,その内訳は気管支鏡6例,VATS(video-assisted Thoracoscopic Surgery)を含む胸腔鏡8例(うち3例は縦隔鏡併用),縦隔鏡4例であった.2例の早期肺癌はVATS下肺生検にて,悪性胸腹中皮腫はVATS下胸膜生検にて診断された.呼吸谷内視鏡検査に関連した合併症を認めなかった.結論.呼吸器内視鏡検査は安全で確実性が高い診断手技であるため,アスベスト検診において胸部悪性腫瘍を疑う受診者に対して積極的に施行すべきである.

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© 2007 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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