正常の胸部X-Pで気管支は肺門部における透亮像および肺門近傍の輪状陰影として観察される。輪状影は気管支のend-onの像であり、気管支壁の炎症、あるいは間質性浮腫の際、輪の壁が厚くなる。またこの場合、軌道状、管状陰影として認められることもある。肺野で気管支周囲の含気がなくなるとき、空気含有の気管支が浮き上ってみえ、これをair bronchogram signという。これの出現機序としては浸出液、濾出液による気管支周囲肺組織の空気の置換ばかりでなく、肺の虚脱、収縮による容積減少(気胸、肺線維症など)によっても生じ得る。気管支腔内の空気が水密度物質(water-dense material)によって置換されるときにも気管支自体を現わす特徴的な陰影を呈するようになる。このような物質としてはいままで知られていた気管支分泌液、膿の他に、血液および細胞成分であることもある。これら4物質による陰影は共通の特異な陰影であるため、X線的診断名として気管支鋳型陰影(bronchial cast shadow)という名称を用いた。