気管支学
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歯肉アメーバが同定されたアメーバ性肺膿瘍の1例
羽隅 透斎藤 泰紀阿部 二郎星 史彦川村 昌輝田中 遼太
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2011 年 33 巻 5 号 p. 331-336

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抄録

背景. 歯肉アメーバは口腔内に寄生するが病原性は有さないと考えられている.症例. 53歳,女性.喀血を主訴に来院.胸部CT上,右上葉に膿瘍性腫瘤を認めた.気管支鏡擦過にて口腔内常在菌のみ(抗酸菌・真菌陰性),細胞診class Iであった.肺膿瘍として抗菌薬投与を行うも陰影の改善は得られなかった.2回目の気管支鏡検査にて擦過物から放線菌を認めたためcotrimoxazoleが投与された.半年間の治療後も陰影の改善および血痰の消退は得られなかった.3回目の気管支鏡検査の結果,擦過細胞診にて多数のアメーバ原虫が検出され,肺アメーバ症との確定診断に至った.アメーバ原虫はPCR解析により歯肉アメーバと同定された.metronidazole内服治療を行い,1ヵ月後の胸部CT所見では著明な陰影の改善を認めた.結論. 歯肉アメーバを病原体とする極めて稀なアメーバ性肺膿瘍症例を経験した.治療抵抗性の肺膿瘍では,極めて稀ではあるが肺アメーバ症をも想定した検索が必要である.

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© 2011 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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