2023 年 45 巻 1 号 p. 66-71
背景.悪性リンパ腫に対する超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)の診断率は低く,外科手術による診断が必要になることがある.また悪性リンパ腫の縦隔病変は気道狭窄をきたすことがある.症例.45歳女性.咳嗽および呼吸困難を主訴に当院を紹介受診し,胸部CTで前縦隔に6 cm大の腫瘤を認め,気管分岐部が狭窄していた.気管支鏡検査を施行し,気管分岐部前方でViziShot2Ⓡ 22 G針を用いてEBUS-TBNAを複数回行ったが微小検体しか得られなかった.診断を急ぐ必要があり,コアトラップ付きEchoTip ProCoreⓇ 22 G針に代えて穿刺したところ,良好な組織検体が採取できた.組織診断はB細胞性リンパ腫で,Ann-Arbor分類のII期であった.気道狭窄に対して,全身麻酔下で硬性鏡を用いて気管分岐部にDumon-YステントⓇを留置した.R-CHOP療法を開始したところ,縦隔病変は縮小しステントは留置5か月後に抜去することができた.同療法を6コース施行し完全寛解が得られ,その後再発は認めていない.結論.EBUS-TBNAで悪性リンパ腫を診断する際,コアトラップ付き穿刺針を用いると良好な検体が得られ,診断に有用なことがある.また気道狭窄を伴う悪性リンパ腫症例では化学療法前に一時的な気道ステント留置術は有効な治療法である.