2023 年 45 巻 1 号 p. 59-65
背景.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などの悪性リンパ腫が気管気管支に転移することが知られており,その進展形式はびまん性粘膜下浸潤を呈することが多い.一方,マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma:MCL)が気管気管支に転移し,孤立性結節の所見を呈するのは稀である.症例.81歳女性.10年前にMCLを発症し再発と寛解を繰り返していた.胸部単純CTで気管気管支内に結節が出現し,FDG-PETで同結節をはじめ,頸部・縦隔リンパ節などに異常集積を認めた.気管気管支病変はMCL転移の非典型例と考えられ,診断的治療目的に気管支鏡下腫瘍生検術を施行した.気管気管支転移を含むMCLの再発と診断し,チロシンキナーゼ阻害薬の導入により一旦は寛解を得たが,病勢の悪化で3年8か月後に原病死した.結論.MCLは多発転移の一部として気管気管支内に孤立性結節を呈することがあるため,気管気管支病変にも留意する必要があることが示唆された.