2024 年 46 巻 1 号 p. 25-30
背景.受傷機転が不明瞭で,画像検査や気管支鏡検査で複合的に診断した穿通性気道損傷の1例を経験したため報告する.症例.83歳男性,電動草刈り機を使用中に転倒し前胸部を打撲した.その後から咳嗽に伴い持続的な喀血を認めるようになったため当院を受診した.前頸部と前胸部に小切創を認めた.胸部CT画像では両肺に血液の吸い込みと思われるすりガラス陰影と,気管内膜様部と右前胸部皮下に異物を疑う高輝度結節を認めた.気管支鏡検査では,気管の穿通損傷が疑われたが,異物を直接観察することはできなかった.最終的には左頸部側面アプローチにより外科的に摘出された.異物は電動草刈り機の破片であった.結論.外傷が原因の気道異物を認めた症例を経験した.刺入創が小さい異物では診断が困難な場合がある.病歴を詳細に聴取し早期診断を心がけることが重要と考える.