気管支学
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東北大学抗酸菌病研究所における気管支管状切除
仲田 祐
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1985 年 7 巻 4 号 p. 375-383

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抄録

気管気管支管状切除が機能温存手術として, 日常一般的に行なわれるようになったことはよろこばしいかぎりである。症例は, 炎症, 外傷による狭窄から次第に悪性腫瘍に移ってきた。肺機能は加齢とともに急激に減少するので, 特に肺癌患者にとって意義が大きいと考える。我々は呼吸不全患者の治療法として肺移植の臨床応用をめざしているが, この気管支管状切除は肺移植への前段階と考えている。当研究所における気管支の管状切除吻合は73例で, 外傷および炎症によるもの12例, 腫瘍によるもの61例(83.6%)である。これは, 肺癌肺切除1, 140例中5.4%を占めるにすぎない。術式としては術後縫合不全あるいは肉芽, 瘢痕による狭窄を防ぎかつ吻合部癌再発がないようにということにつきる。そのためおのずから術式が決まってくる。吸収性の糸を用い全層に深く厚く針をかけ, むしろ荒く縫合する。また小口径側が広くなるよう分岐部で切断し, 大口径側に引き延ばすように吻合することが肝要である。このことは可及的大きく気管支を切除することになる。悪性腫瘍のうち扁平上皮癌が46例(79%)を占めている。肺癌における気管支管状切除5年生存率は, I, II期で67%, III期で7.9%, 全体で37%と当研究所の肺切除成績を上回った成績である。肺動脈形成術を伴った症例が9例あり, 2例が2年2月および6月生存しているが他は再発死である。肺動脈切除範囲がせいぜい2cm, 隣接臓器浸潤の範ちゅうに入るものであるので, むしろこの症例に対しては肺剔除と充分なリンパ節郭清をすべきものと現在は考えている。気管分岐部切除は8例ですべて同側開胸により行なっている。術後denervationの影響が, 肺血管系, 気道系および咳嗽反射, 呼吸調節の面に現れることになるが, 大きな問題にはならない。肺内迷走神経枝の温存を考えるあまり剥離が不充分であったり, リンパ節の郭清が不充分になっては手術の意味がなくなる。術後肺機能の低下は, denervationの影響を考えるより, むしろ吻合部周辺に発生した肉芽組織が経過とともに硬化し狭窄を起こしてくるためであることを強調したい。将来はこの術式をもとに肺移植, 人工臓器移植を軌道に乗せるべく努力して行きたい。患者の苦痛を取り除き, 延命をはかるばかりでなく, 社会活動が充分にできるよう機能を考えて対処していくのが今後の医療であると思っている。

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© 1985 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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