気管支学
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人工気管による気道再建の現況と将来
池田 貞雄松原 義人小鯖 覚八木 一之塙 健榎堀 徹住友 伸一二宮 和子畠中 陸郎船津 武志桑原 正喜宮本 好博安田 雄司
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1986 年 8 巻 4 号 p. 421-431

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抄録

我々はNeville人工気管を臨床例に使用して合併症が発生することを知り, Marlex meshを人工気管の周囲に接着する改良を試みた。その結果, Neville人工気管は可撓性と伸縮性がなく, 周囲組織と親和性に欠けるため, 吻合部の離開と肉芽形成, それに続いて人工気管の逸脱が起こるメカニズムを明らかにした。この問題点を解決する目的で, 新たに桂型人工気管の開発を試みた。すなわち, 柔らかいシリコンゴムを材料として, モデル1はリブが平行のもの, モデル2はリブがスパイラルのもの, またモデル3はモデル2を改良して, さらに両端部を10mmと長くしてstentの機能を持たせたものである。実験的研究の結果, 吻合部の離開の点は未解決であるが, 人工気管の逸脱と吻合部の肉芽形成は防止することができた。我々はこれらの人工気管を12例の気管あるいは気管分岐部の再建を必要とする症例に用いたが, その遠隔成績は未だ満足すべきものではない。現在のところ, 人工気管は端々あるいは端側吻合が不可能な悪性腫瘍の症例と切迫窒息を防ぐ目的の症例に限定して使用すべきと考えている。

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© 1986 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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