1986 年 8 巻 4 号 p. 546-555
現存の慢性気管支炎の診断基準は, 喀痰という症状を主体としたもので, 理想的でない。この点を改善するために, 従来の診断基準にX線, 呼吸機能などの検査で総合的に慢性気管支炎と判断された27症例について気管支鏡検査を施行し, 以下の成績が得られた。1)気管支鏡像の類似した所見を示す例をグループ分けして, 4つのタイプ, すなわち, 腫脹型, 肥厚型, 移行型, 萎縮型に分類しえた。これら型間には多少の所見の混在がみられたが, ほとんどの例は典型的所見を示した。特に萎縮型の所見は, 気管支鏡像でよく説明しうる所見である。よって気管支鏡像は本疾患の診断上重要である。2)慢性気管支炎と早期気管支癌の気管支鏡像を比較検討した。その相違はほとんど見出し難いが, 気管支の粘膜, 分岐部, 縦走ひだに多少の違いをみた。すなわち, 慢性気管支炎では, 硬く, こわばりの所見, 癌では柔軟な所見が鑑別となった。しかし, 多くは生検で確認する必要があった。