気管支学
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肺癌の気管支鏡所見より推測可能な臨床病期・手術方法・予後の検討(気管支鏡所見のとらえ方をめぐって : 特に表層浸潤型扁平上皮癌について)
雨宮 隆太平良 修永井 完治雨宮 裕子鍾 富明松島 康於保 健吉早田 義博山田 隆一
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1986 年 8 巻 4 号 p. 573-583

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抄録

日本肺癌学会の新しい「気管支鏡所見分類(1986年)」を用い, 気管支鏡所見より臨床病期, 手術適応と術式, 予後を推測することが可能である。内視鏡的臨床病期 : T因子は「肺癌取扱い規約」のTの規定を用いる。N因子は肺門発生肺癌においては, リンパ節圧排による壁外型所見を除き推測することが困難である。末梢発生肺癌は各組織型の増殖形態を基にN因子の推測が可能であり, 粘膜主体型では, 葉支より中枢側に病的所見を示すものをN_2, 病期IIIとし, 区域支より末梢側に病的所見を示すものをN_1ないしN_2, 病期IIないしIIIとする。粘膜下主体型では, 区域支より中枢側に病的所見を示すものをN_2, 病期IIIないしIVとし, 亜区域支より末梢側に病的所見を示すものをN_1ないしN_2, 病期IIないしIIIとする。内視鏡的手術適応と術式 : 肺門発生肺癌は主幹に病的所見を認めても肺摘除, ときにsleeve肺葉切除による手術可能例がある。末梢発生肺癌は粘膜主体型が葉支より末梢側, 粘膜下主体型が区域支より末梢側に病的所見を認める例を手術可能と考え, それより中枢気管支に病的所見を観察する例では, 手術不能か肺摘除ないし困難な肺葉切除が必要となる。末梢発生肺癌は気管支鏡的に明らかな病期III・IVと推測した例の半数が肺摘除となる。予後 : 表層浸潤型肺癌は長期生存が期待できる。末梢発生肺癌の粘膜下主体型を示す例のうち病期III・IVと推測したものは, 長期生存を期待できない。

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© 1986 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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