1986 年 8 巻 4 号 p. 564-572
胸部X線写真無所見肺癌の切除例のうち, 連続ブロック切出し法による組織学的検索で, 独立した上皮内癌とされた7例および長径8mm以下の微小浸潤癌6例の気管支鏡所見を検討した。上皮内癌には所見の乏しい例が多く, 微小浸潤癌よりも局在診断に難渋した。無所見例は上皮内癌で3例, 微小浸潤癌で1例あった。13例中5例はspurとは離れた部位に発生しており, spur以外の部位もおろそかにできない。spur発生例でもspur全体ではなく, ごく一部分に変化が限局していることが多かった。一般にspurの肥厚と表現される例も詳細に検討すると, spur中央の小水疱状の微小隆起, spur前半にある浮腫状で微細顆粒状の微小な半球状隆起, spur中央の腫脹, spur辺縁部の蒼白な微小隆起, のような所見を呈していた。小さな病変では扁平上皮化生との鑑別が困難な例も多く, 積極的に擦過, 生検を行なって診断をつける必要がある。