1986 年 8 巻 4 号 p. 586-592
気管支鏡所見の一つに血管怒張があるが, この怒張した血管は, 単に気管支の既存血管が拡張したものと考えられている。ところで気管支壁には, 気管支動脈性の血管のみならず静脈性の血管も存在していることが明らかにされており, 我々は僧帽弁狭窄症や上大静脈閉塞例において気管支鏡下に気管支静脈と考えられる怒張血管を認めている。そこで, 仮にこのような怒張血管が気管支動脈性の血管である場合があるとすると, 気管支動脈が発達した病態で認められるのではないかと考えて気管支動脈造影上, 気管支動脈の拡張, 増生の著しい症例の内視鏡像を検討した。いずれも血管怒張は認められず, 気管支動脈の発達は気管支鏡で血管怒張を呈することとは無関係であることが明らかになった。今後このような怒張血管が気管支静脈である可能性を念頭において, 個々の症例について検討する必要があると思われる。