気管支学
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食道癌における縦隔転移リンパ節による気道浸潤例の形態と治療
沖津 宏
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1986 年 8 巻 4 号 p. 649-657

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抄録

食道癌の縦隔転移リンパ節の増大による気道浸潤14例(気管12例, 左主気管支2例)につき, 臨床的特徴を検討するとともに内視鏡的Nd-YAGレーザー治療の有用性を評価した。14例のうち外科療法後の症例は11例で, 他の3例は非手術例であった。外科療法例において術後気道浸潤診断までの期間は2カ月∿4年9カ月(平均1年5カ月)であった。手術時, 組織学的進行度がstage0.Iという比較的早い時期の症例が4例で, 外科療法後の合併療法の重要性が示唆された。気道浸潤形態を内視鏡所見より3型に大別した。気道粘膜に被覆されるが明らかに壁内浸潤を示す所見をI型, I型所見の有無にかかわらず, 粘膜上皮下の広範な癌性リンパ管炎型転移を中心とした所見をII型, 粘膜を破壊し結節状腫瘤が気管内腔を著明に狭窄する所見をIII型とした。I型は3例, II型は3例, III型は8例であった。このことは肺癌の縦隔リンパ節転移と比較して, 食道癌ではより気道狭窄を呈しやすく, 食道癌の臓器特異性が示唆された。III型所見例を中心に, 高度の換気障害を有する9例に対して, 内視鏡的Nd-YAGレーザー治療を施行した。9例のうち5例は窒息死の危険が迫っているため, 救命救急的な気道開大を目的とし, 他の4例は姑息的気道開大を目的とした。全例に所期の目的を達成し, 特に救命救急的に気道が確保された症例は重篤な換気障害が消失し, 放射線治療および化学療法に引き継ぐことが可能となった。レーザー治療例の予後は2カ月∿1年2カ月(平均7カ月)であり, 救命救急を目的とした5例の中で, 6カ月以上の生存が4例にみられたことは, 本法が救命救急的手段としてのみならず, 気道浸潤食道癌集学的治療の中の初期治療として評価されるべきと考えられた。

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© 1986 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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