1998 年に噴火し,火山ガスの影響により全島避難している三宅島の切土法面植生に対して見取り調査を行った。三宅島は離島であり,国立公園域であるため外来植物である牧草の使用を控え在来種による法面緑化を進めようとする動きがある。しかしながら,在来種の国内採取種子は市場に流通していないため流通している中国産在来種種子を用いることになり,三宅島自生種の遺伝子攪乱を起こすおそれがある。この点を回避するために,過去の牧草による急速緑化箇所の植生推移状況を目視観察し,植生交代の実体を確認し,牧草使用の可能性について検討を行った。牧草は三宅島に自然分布しないため,遺伝子の攪乱に関する心配が無いため,むしろ外国産在来種よりも三宅島自生種に与えるインパクトは低いものと考えるからである。その結果,5 年程度でススキなどの周辺植生との交代が始まり,10 年以降は周辺植生から侵入したトベラなどの低木の生長が始まり,20 年程度で低木とススキの混在する状態となり自然回復が進むことが明らかになった。また,トベラの置苗吹付工を併用すると,5 年程度で同様の景観回復が可能となることが判明した。