日本緑化工学会誌
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技術報告
整枝剪定屑堆肥化物を培地とした野菜の栽培
邑瀬 章文江波戸 宗大米林 甲陽安井 輝雄
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2004 年 30 巻 2 号 p. 428-430

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抄録

公園の緑化樹や街路樹などの大量に発生する整枝剪定屑の有効利用を促進するため,整枝剪定屑を2 種類の工程によりそれぞれ処理し,性質の異なる有機質資材を適宜組み合わせることで,野菜の栽培に利用するシステムの開発を検討した。発生現場にて車載型粗破砕機によりチップ化した整枝剪定屑を,集積場にて木質部および葉部に分別し,得られた葉部のみを約3-6カ月間堆肥化させた後,乾燥させて反応を停止させた(堆肥A)。一方,整枝剪定屑をそのままタブグラインダーにより微粉砕して堆積し,約10 カ月以上にわたり十分に堆肥化させた後,約5mm孔の篩を通した(堆肥B)。篩を通過しなかった画分,堆肥B に少量の堆肥Aを混入させた用土の順にポットに重層し,そこに野菜の苗を移植した後,少量の油かすを添加し,さらに堆肥A のみを積層した。各層の厚さ比は下から順に約3: 7: 1 であった。堆肥A は用土の物理性を改善する効果のほかに,水溶性カリウム量が18.4 cmolc kg-1 と堆肥B に比べて約4.6 倍高く,肥効が期待できた。栽培後の野菜の生長および根張りは非常に良好であったことから,ポット内の排水性および塩類濃度は適度に保持されていたと考えられた。整枝剪定屑堆肥化物のみを利用して野菜を栽培できることが実証された。

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© 2004 日本緑化工学会
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