気温の上昇が樹木の成長と生物季節に及ぼす影響を検討する目的で,人工気象室内でウリハダカエデの3年生実生苗を用いた育成実験を行った。人工気象室の温度条件は,常に野外の気温と同じにした条件,常に野外の気温よりそれぞれ1.0,2.0,3.0℃高い条件の4種類とした。育成実験の結果,当年枝伸長量,地際の肥大成長量は,処理区間に有意な差が認められなかった。しかし,温暖条件下において,器官別乾物重量,当年枝における節数および展開葉数の減少した個体が確認された。さらに,対象区と比べ,温暖条件下における夏季の蒸散速度は小さくなった。また,+2.0~+3.0℃の温暖条件では,紅葉や落葉の進行が遅れ,着葉した状態で冬を迎える葉が確認された。以上のことから,気温の上昇によりウリハダカエデの連続的な成長は抑制され,紅葉や落葉は遅れると判断された。