小坂鉱山の煙害地に造成されたニセアカシア林について,92 か所の林分調査資料を解析し,施工後50 年を経た段階での緑化の成否を明らかにするとともに,林分の形成過程を推測した。調査区の幹密度は759.8±249.6 本/ha,平均樹高は13.9±3.7 m であった。ほとんどの調査区で森林が形成され,平均断面積合計は24.8±7.0 m2/ha と40 年生ミズナラ林に相当することから,緑化の第一目的は達成できていると評価された。しかし,遷移については在来種の優占度が低いことから,遅滞している林分が多いことが確認された。これには,かつて植生が煙害により広範囲で衰退したことが原因で,在来種の種子散布がほとんど行われてこなかったことが重要な要因と考えられた。一方林分の形成過程は,ニセアカシアは定着後の急速な初期成長により比較的早く成林状態に達するものの,20 年生以降の林分では倒木等による幹密度の減少が根萌芽による幹の加入により補われ,群落構造に大きな変化がないと推察された。今後の造成地の管理は,老齢に向かうニセアカシア群落の維持機構を解明することが不可欠であると考えられた。