抄録
根粒菌フランキアを活用した効果的なケヤマハンノキのポット苗の短期育苗法の確立を目的とし,簡便で確実なフランキアの接種方法について調査した。市販の消毒済み培養土で育苗した苗の根粒着生率は30%以下と低かったため,天然のケヤマハンノキの苗から根粒を採取し,水道水と一緒にミキサーにかけた懸濁液を発芽直後の種子に散布したところ,根粒着生率を大幅に高めることができた。また,苗の成長と根粒の量には正の相関があり,その懸濁液を0.1 g/l の濃度で接種すれば高い効果が得られることや根粒の採取地によって苗の成長に及ぼす影響が異なることが明らかになった。本手法は簡便で実用的であることから,今後,フランキアの感染率を高める好適な育苗環境の整備と窒素固定能力の高い有用菌株に感染した根粒の選抜を行うことによって,生育期間が一年以内で出荷用ポット苗の生産は可能になると考えられた。