2010 年 36 巻 1 号 p. 99-102
生物多様性に配慮した自然回復緑化の取り組みとして,地域住民らにより施工地周辺で採取された現地採取種子を精製・調整し,施工時期まで木本種子貯蔵施設で低温貯蔵し,施工前に種子の品質を確認して法面緑化に使用した事例の概要を報告する。施工1年2ヵ月後までの植生調査の結果,法面には導入種子から発芽生育したヌルデ,アカメガシワを主体とする低木林が形成され,その林床に現地採取種子から発芽生育したシラカシ,コナラ,ムクノキなどの成立が確認された。形成された植物群落はヌルデの被度が高く,導入種子の配合には改善の余地が残るが,現地採取種子から成立した個体を含む植生の順調な回復が期待される。