日本緑化工学会誌
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36 巻, 1 号
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論文
  • 橘 隆一, 藤江 幸一, 千束 智宏, 福永 健司, 太田 猛彦
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    緑化後14年経過したオオバヤシャブシ(Alnus sieboldiana Matsum.)の優占する緑化法面において植物バイオマスとリター,および生育基盤によるCO2 固定量を推計した。その結果,CO2 固定量は,1 m2当り,幹部分で21.0 kg,枝部分で4.2 kg,根部分で5.5 kg,リターで1.7 kg,生育基盤で8.8 kgとなった。内訳では,幹と枝による地上部バイオマスで61.3 %を占め,次いで生育基盤で21.4 %,根による地下部バイオマスで13.3 %,リターで4.0 %の順であった。さらに,法面緑化工事にかかるCO2 排出量を考慮した上で,正味の累積CO2 固定量を推計した結果,金網張工に植生基材吹付工を組み合わせでは,緑化後11年で炭素収支がプラスに転じ,緑化後30年で80.6 kg CO2 m-2だった。一方,金網張工と現場吹付法枠工と植生基材吹付工の組み合わせでは,法枠の大きい場合,小さい場合にそれぞれ緑化後19年,28年で炭素収支がプラスに転じ,緑化後30年でそれぞれ11.3,0.3 kg CO2 m-2 だった。
  • 山瀬 敬太郎, 栃本 大介, 関岡 裕明, 藤堂 千景
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    間伐木を利用した筋工の効果を明らかにするため,兵庫県内の人工林15か所において筋工を施工した林分と施工していない林分の侵食土砂量を測定した。その結果,筋工を施工した方が侵食土砂量は少なく,0.070~0.882 3・ha-1・yr-1であった。また,2009年8月台風第9号の豪雨時には,筋工を施工しなかった場合には0.318~4.743 3・ha-1・yr-1となったのに対し,筋工を施工した場合には0.128~1.023 3・ha-1・yr-1に留まり,集中豪雨時にも侵食防止効果が大きく発揮されていた。筋工による保全効果を表すUSLEの保全係数には地点間でばらつきが認められたが,効果が大きかった地点では,山腹工の一種である伏工と同程度以上の効果が得られていた。
  • 飯塚 隼弘, 近藤 三雄
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究では日本の緑化工の大きな潮流を「古墳・墳丘」,「造林」,「築堤・護岸」,「土塁・土手」,「砂防」の5分類し,わが国ののり面緑化工の起源と変遷史をまとめた。その結果,これまでの定説とされてきた17世紀よりはるか以前の1世紀内外あるいは718年にまで遡り,さまざまな傾斜地を固定し,侵食・崩壊を防ぐため各種の植物による緑化が施されていた記録が明らかとなった。この流れを受け,明治維新以前には砂防に係る緑化工法が概ね確立され,さらに明治以降,海外技術も導入され,今日ののり面緑化工の礎が形成されたものと思われた。なお,4世紀頃の古墳築造技術の中には現在の土壌シードバンク( 表土の播き出し) 工法の原点とも思われるような試みの記述もあった。
  • 松崎 紀雅, 石垣 逸朗, 阿部 和時, 園原 和夏, 内山 佳美
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    神奈川県の丹沢山地では1923年 (大正12年) の関東大地震,1972年の豪雨災害において多数の崩壊地が発生し,崩壊発生から長い年月がたっているにもかかわらず植生回復が進んでいない崩壊跡地が多数みられる。本研究では,西丹沢山地内に,崩壊発生から2009年までの37年経過した崩壊跡地2箇所と62年以上経過した2箇所を調査区として,崩壊地内の植生状況と微地形調査を行い,その植生回復状況を明らかにすることを目的とした。4調査区とも標高620~700m に位置し,地質は石英閃緑岩である。崩壊地内では地表面の状況の違いにより木本の生育に明らかな差がみられたため,崩壊跡地の周辺部を未崩壊域,崩壊地内を安定域,不安定域,谷部に分類して植生の侵入,生育状況を調査した。調査の結果,1) 地表面に凸凹が多い複雑な地形をした崩壊地の方が木本類の生育が多い。2) 崩壊跡地の周囲が人工林の場合よりも広葉樹林の方が侵入する木本の種数及び本数ともに多い。3) 大径木の周辺には小径木が生育する傾向が見られる。4) 崩壊域と未崩壊域の周縁部の表層土は安定していて小径木が生育する傾向が見られる。5) 表層土が存在しなくても亀裂の生じた基岩面に木本の生育がみられる。6) マサ土の裸地面や亀裂のない基岩の斜面で木本の侵入は困難である。7) 谷部と不安定域では木本の侵入,定着は困難である。全ての調査区において山腹平均傾斜は40°を超えているが,1) ~5) のような条件が整えば,急傾斜な崩壊地においても徐々に木本の侵入が始まり,林相が回復するものと考えられた。
  • 執印 康裕, 松英 恵吾, 有賀 一広, 田坂 聡明, 堀田 紀文
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    宇都宮大学船生演習林内の約310 haのヒノキ人工林を対象に林齢分布の経年変化が表層崩壊発生に与える影響について,分布型表層崩壊モデルに確率雨量を入力因子として与え検討した。同地は1998年8月末豪雨によって,20年生の林分を中心に表層崩壊が多発しているが,この豪雨の確率雨量評価を行った結果,継続時間72時間雨量で確率年約170年の降雨であることが確認された。次に2年確率72時間雨量を用いて1939年から2008年までの林齢構成の経年変化が表層崩壊発生に与える影響について,分布型表層崩壊モデルから出力される潜在表層崩壊発生面積を指標として検討した結果,指標値の範囲は約0.8 haから4.9 haの範囲にあり,降雨条件が同じ場合に1970年から1980年にかけて表層崩壊発生の可能性が高い状態にあると評価された。さらに1979年から2008年までの年最大72時間降水量をモデルに入力して検討した結果,1998年時点で表層崩壊発生の可能性が最も高いことが示された。
  • 山田 晋, 榎本 百利子, 石川 祐聖, 南 定雄, 加藤 和弘
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    管理されたクロマツ二次林の林床植生の復元にあたり,刈り取り残渣を用いることの有効性を把握すべく,刈り取り残渣の撒き出し実験を行った。地上植生の出現種のうち刈り取り残渣から発芽した種の割合は約30%と低かったが,地上植生で開花結実が確認された種の約60%は刈り取り残渣から確認された。刈り取り残渣には,発芽個体密度は既往文献より低かったものの,多種の草原生種が含まれた。地上植生と比較して,刈り取り残渣から発芽した樹林生種の種数は顕著に少なく,林外の人為攪乱地に生育する雑草種の密度は低かった。植生復元材料として刈り取り残渣を用いる際には,草原生種,樹林生種といった種群に応じて復元地へ導入しうる種の割合が異なることを踏まえ,より多数の復元対象種を再生すべくさらに研究を進める必要がある。
  • 柴田 忠裕
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    厚さ数cmの薄層基盤で育成されたマット植物による傾斜屋根緑化は,高い暑熱軽減効果をもち,室温の上昇が抑制されたが,基盤がより厚いマット植物を用いた場合と比較し,緑化効果はほぼ同程度であること,さらに,エアコン稼働時の省エネに有効であること,マット植物はそれを構成する植物の種類によって緑化効果に大差が無いことが明らかになった。これにより,積載荷重制限の大きい一般住宅や金属折板屋根等の傾斜屋根緑化用素材として,マット植物は有用であり,暑熱対策に有効であることが判明した。
  • 佐々井 俊文, 下村 孝
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    ケテイカカズラの付着および巻きつきによる登攀特性の調査を目的として,付着登攀用に板塀区,巻きつき登攀用のフェンス区,巻きつき及び付着双方を想定した下半分板塀,上半分フェンス区と,その上下を逆にした区およびダブルメッシュフェンスの内側にスギ板を挿入した区を設けて生育実験を行った。その結果,フェンスもしくはフェンスと板を重ねた場合に登攀が速く,気根の発生は板面において盛んであった。板塀に付着を行った枝がその上部のフェンスに巻きつき登攀することが確認された。以上の結果から,ケテイカカズラは,板塀とフェンスが混在する条件下で生育すると,遭遇した立面に応じて付着と巻きつきのいずれかの特性を選択し,登攀することが明らかになった。
  • 竹内 真一, 増山 港
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    パーゴラに誘引したトケイソウ(Passiflora caerulea)の蒸散量を定量的に評価するために,ヒートパルス法により樹液流測定を行い,切り木実験により吸水量を測定した。従来のヒートパルス法では高流速の測定精度に問題があったため,ヒートパルスが最大上昇温度に到達する時間を算定する手法を併用し,高流速でも対応できる測定方法を検証した。吸水量との比較の結果,トケイソウの蒸散量は0.22~16.3 l/dayと算定された。また,パーゴラを遮光ネットで被覆処理することにより受光態勢を変化させて蒸散特性を検討した結果,パーゴラの形状が反映された樹液流動となり,パーゴラの向きや構造が誘引される植物と密接な関係があることが示された。
  • 兼村 星志, 大藪 崇司
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究は,1926 年から1945 年までの昭和前期における樹木治療法の継承および治療の実施を担った媒体あるいは主体の変遷,植物病院が1943 年に終了するまでの過程について,文献から調査を行い,樹木に関する社会背景を踏まえ考察した。その結果,樹木治療法は資料・文献により継続的に報告されるも,組織的な治療実施は行われなかったことが考察された。その背景には,用材に対する高い国内需要があり,学界にはその供給に資する研究成果の獲得が社会的に要請された社会情勢があった。そのため,商品価値の高い樹木の安定的な生産に資する研究が優先的に取り組まれた。しかし,樹木治療に対する関心や需要が拡大している今日において,樹木治療の技術やそれに関する研究成果は,多くの人にとって重要性を増しつつあるデータとなっており,それらの更なる蓄積および情報発信が期待される。
  • 長谷川 祥子, 下村 孝
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    作業室内の小型および大型植物が作業者の心理に及ぼす影響を調査した。実験参加者は実験室で作業を行った後に,気分および作業遂行と作業室印象の評価用紙に記入した。その結果,作業室内の植物は,作業初期のストレス感と疲労感を軽減し,リラックス感を向上させた。さらに,小型植物のみが覚醒度を高めると判断された。大型植物と同様,小型植物も作業室の印象評価を向上させることが示唆された。以上の結果から,作業空間内における小型植物も大型植物同様に作業従事者の環境改善に有効であると考えた。
  • 烏雲 巴根, 長谷川 祥子, 下村 孝
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    中国人留学生と日本人学生を被験者として屋上緑化の景観評価を比較検討した。都市の背景4種類と5種類の屋上緑化様式の合成画像20枚を用いて,SD法による景観評価実験を試みた。分散分析の結果,各背景で,日本人学生と中国人留学生の属性と緑化様式の二要因が単独あるいは交互に評価に影響を及ぼした。中国人留学生と日本人学生は屋上緑化の景観に緑の質および景観の自然性と伝統性の認識が共通していることが示された。また,背景ごと,居心地,統一性及び庭園様式の認識などで相違が認められた。
  • 黒瀧 麻衣, 中島 敦司, 山本 将功, 仲里 長浩
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,小規模河川の河口域における海浜植物の保全方法の確立を目的として,攪乱の大きい砂州の海浜草本群落において植生と微地形との関係を調べた。大阪湾南部における海浜植物が生育する4河川の河口域の砂州で,2006年9月に植生調査,2006年9月・12月に断面測量を同一ライン上で実施した。その結果,砂州の微地形と海浜草本群落の定着の関係が明らかとなった。標高の変化が大きい場所で植物は生育しておらず,標高の変化は, 潮位と関係があった。また,砂州が波の方向を遮るような形状をしている場合,砂州の海側よりも川側の方が生育する植物種数は多く,海浜植物は低位の場所で優占していた。
  • 岡 浩平, 吉崎 真司, 小堀 洋美
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    静岡県遠州灘海岸において,堆砂が海浜植生の成立に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,植生と堆砂の経年変化を調査した。対象地の植生はTWINSPANによって3つの群落型に分類され,汀線から内陸に向かって,帯状に植生が変化した。DCAの序列化を行ったところ,1軸で各群落型は明瞭に分かれてプロットされた。また,1軸のスコアと堆砂深の間には,強い相関関係が認められた。このことから,各群落型の分布には,堆砂が影響していると考えられた。一方,群落型の経年変化を考慮に入れて解析したところ,各群落型の分布は,堆砂だけではなく,波浪や種子の供給など他の要因の影響を受けていると考えられた。
  • 寺南 智弘, 中島 敦司, 仲里 長浩, 市原 諭, 黒瀧 麻衣, 山本 牧子, 山本 将功, 吉川 賢, 張 国盛
    原稿種別: 論文
    2010 年 36 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    中国内蒙古自治区の毛烏素沙地では,自生種サリュウ(Salix psammophila C. Wang et Ch. Y. Yang)を用いた植林が行われている。筆者らは,2008年に現地自生のサリュウを対象に,流動砂丘に調査プロットを設置し,合計36個体の調査対象木の全量掘取り調査を行った。測定の結果より,生育比高の高い個体ほど,当年枝主軸の伸長量および乾燥重量が増加するという傾向がみられた。地下部の成長についても,生育比高の上昇に伴って,流砂に埋没した主幹の長さが大きくなっており,主幹に着生する一次側根の合計本数も増加していることが分かった。一方,主幹に着生する一次側根の平均伸長量については,生育比高が上昇するにつれて減少するという傾向がみられた。
技術報告
  • 橘 隆一, 中村 華子, 福永 健司
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    在来の落葉性高木類6科8種の種子発芽率を,屋外のポット試験にて測定した。その結果,オニグルミ,サワグルミ,ミズキでは,既往文献と概ね同様の発芽率を示した。タムシバの発芽率も既往文献と概ね同様であったが,2~3年目の春播きでも比較的高い発芽率を示したことから,発芽率を維持したままの種子貯蔵が可能と考えられた。乾燥によって発芽率が低下するといわれているホオノキとキハダの取播きでは,既往文献と比べ低い値を示したことから,試験時の水分状態が大きく影響した可能性が考えられた。アベマキとムクノキでは,種子を貯蔵する場合に,種子含水率をそれぞれ40 %程度,15~24 %に保つことで,高い発芽率を維持できると考えられた。
  • 小野 幸菜, 氏家 豊和, 吉田 寛
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    生物多様性に配慮した自然回復緑化の取り組みとして,地域住民らにより施工地周辺で採取された現地採取種子を精製・調整し,施工時期まで木本種子貯蔵施設で低温貯蔵し,施工前に種子の品質を確認して法面緑化に使用した事例の概要を報告する。施工1年2ヵ月後までの植生調査の結果,法面には導入種子から発芽生育したヌルデ,アカメガシワを主体とする低木林が形成され,その林床に現地採取種子から発芽生育したシラカシ,コナラ,ムクノキなどの成立が確認された。形成された植物群落はヌルデの被度が高く,導入種子の配合には改善の余地が残るが,現地採取種子から成立した個体を含む植生の順調な回復が期待される。
  • 小向 真人, 福永 健司
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 103-106
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    近年,植生管理を前提とする遅速緑化が注目を受けているが,緑化法面における種子散布の知見は少ない。そこで植生管理の基礎データとして,緑化法面における散布種子と周辺植生との関係を調査した。その結果,法面の上部と下部とを比較すると,散布種子数,種数ともに法面上部の方が多かった。このことから,法面下部は上部と比較して,樹木の生育は良好であるが,種子の侵入機会が少ないことが確認された。
  • 入山 義久, 立花 正, 藤森 雅博, 荒川 明, 小松 敏憲, 高溝 正
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    雄性不稔トールフェスク “エムエスティワン(MST1)” は,イタリアンライグラスの細胞質を持つ核置換系統で,畜産草地研究所と雪印種苗株式会社の共同で育成された。MST1は,完全雄性不稔品種であり,稔性を持つトールフェスクの花粉粒と交雑しても,その後代も完全雄性不稔となる。本試験では,寒地における前報に続き,温暖地における特性調査を行った。MST1の出穂始め日はフォーンに比べ14日遅く,出穂期の草丈は30~40 cm低かった。また花粉粒の放出が皆無で,落下種子からの実生の発生も少なく,種子による繁殖が極めて少ないことが示唆された。MST1は,生物多様性に配慮した緑化材料として期待されており,国内での試作も徐々に始まっている。
  • 小林 慶子, 林 敦子, 田中 涼子
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 111-114
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    外来牧草は早期緑化を目的とした緑化工に広く用いられてきたが,旺盛な繁殖力と被覆力によって周辺からの在来種の侵入を阻むため,在来種を主とする植生への遷移の進行を停滞させる。本研究では,緑化施工後2, 4, 6年の外来牧草が優占する林道のり面に,草刈り実施区と未実施区を設けて3年間の植生変化を調べ,草刈りがのり面の遷移に与える影響を評価した。その結果,草刈りの実施は主に木本種の侵入促進に効果を及ぼすことが示された。ただし,その効果は草刈りを実施した当年でしか見られなかった。しかし,草刈りは,既に施工された外来牧草が繁茂して遷移が停滞するのり面において,遷移の進行を促すために実行可能な植生管理方法の一つとして効果的な方法となると示唆された。
  • 山田 守
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 115-118
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    本報告は,(社)広島県法面協会が実施している法面緑化工事の植生追跡調査に関するものである。この植生追跡調査の目的は,近年の法面緑化工の動向を考慮し,かつ広島県地域にあった法面緑化技術基準を検討することである。筆者は,この植生追跡調査の計画,調査および取りまとめを担当している。植生追跡調査は,2008年から3年間の計画で,現在2年目の調査が完了した。調査結果から,広島県内の法面緑化事例では,ほとんどの法面は植物で覆われ良好な生育状況であった。しかし,木本群落を目指しながらも草本群落でとどまっているなどいくつかの課題が見られた。この植生追跡調査は,2010年度も実施する予定であるが,2009年度までの調査結果を報告する。
  • 田中 淳, 堀江 直樹, 江澤 辰広, 伴 資英
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 119-122
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    強酸性土壌(pH 2.7~4.7)に生育する植物から分離した耐酸性菌根菌を使用した強酸性法面緑化工法の開発を目指し,実験を行った。pH 3.3~4.0の強酸性土壌の上に,耐酸性菌根菌を入れたポットのメドハギの生育は,入れないものよりも良好であった。しかし,pH 1.8ではすべて枯死し,pH 2.5でも生育は不良となることから,適用できるpHには限界があることが示唆された。また,pH 2.5を下回る強酸性土壌に適用するため,強アルカリの中和資材と併用した場合でも,耐酸性VA菌根菌は,植物の酸性抵抗力を高める効果があることがわかった。以上のことから,耐酸性菌根菌は強酸性土壌の対策資材として有効であると考えられる。
  • 北山 敬三, 山田 守
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 123-126
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    伐採木の生チップ(未分解チップ)を利用する資源循環型緑化工の施工事例の植生追跡調査を実施した。調査場所は島根県および広島県内で,調査事例数は8事例である。施工後の経過年月は事例によって異なるが,最も古い事例で6年1ヶ月経過していた。生チップを利用した緑化工法は,初期生育が遅い,イネ科草本の生育が不良である,マメ科植物の生育が良好であるなど,生チップを利用する生育基盤特有の傾向が見られた。本報告では,これらの植生追跡調査結果を踏まえ,生チップを利用する資源循環型緑化工について考察する。
  • 大和田 塁, 佐々木 祐司, 岡村 俊邦
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 127-130
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    本報告は石狩川法面緑化試験堤防において,従来の外来種の堤防法面を在来草本の多様な植生に転換するため,ポット苗とチップマルチを併用した植栽試験の3年間の結果を報告するものである。ポット苗植栽を行った在来草本を継続的に調査したところ,それらの多くは高い定着率を示し,被覆面積は年々増加していた。また,結実している個体も確認された。試験地では植栽後に最大で42 mm/日の降雨があったが,土壌流出はなかった。これらの結果から,今回行った緑化工法は法面の浸食防止機能を維持しながら,生物多様性の保全,河川景観の向上だけでなく,親しみのある野草を利用することにより住民参加を促し,維持管理費軽減にも期待できる。
  • 水沼 薫, 木村 保夫, 佐藤 靖
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 131-134
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    一級河川天竜川および三峰川の一部の堤防では,オオキンケイギク(Coreopsis lanceolata)が優占し,これが堤防の裸地化と浸食の原因となっている。そこでオオキンケイギクの侵入を抑制し安定した堤防植生を形成させるため,チガヤ(Imperata cylindrica)のマット状苗(チガヤマット)を設置し観察を行った。その結果,設置からおよそ半年で堤防法面はチガヤが優占する植生が形成された。この間,堤防法面の浸食は認められなかった。設置から1年後には根茎由来のオオキンケイギクが若干確認されたが,種子由来による侵入は認められていない。
  • 百瀬 剛, 藤田 淳一, 佐藤 靖
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 135-138
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    一級河川天竜川上流の堤防では,法面保護および水防上の法面監視の観点から,年間2回の刈り取りが実施されてきた。しかし,2000年頃より特定外来生物オオキンケイギクの分布が急速に拡大し,堤防草地の裸地化,繁茂に伴う草地性在来種の減少などの影響が発生している。そこで,本研究では,オオキンケイギクの発生抑制を目的として,刈り取りによる直接的な駆除方法(刈り取り試験)とGISによるオオキンケイギクの分布拡大の分析をおこなった。その結果,年間3~4回の刈り取りによりオオキンケイギクの被度は減少し,一定の効果は得られた。またオオキンケイギクが進入しにくい法面植生としてチガヤタイプの植生が抽出された。
  • 杉浦 弘毅, 大藪 崇司, 藤原 道郎, 田中 賢治, 朝日 伸彦, 中屋 深佳
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 139-142
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    近年,生物多様性の観点から,在来生物に被害を及ぼす外来生物が注視されている。中でもナルトサワギクは,兵庫県の淡路島および徳島県鳴門市を中心に分布域を拡大しており,外来生物規制法により特定外来生物に指定され,分布拡大防止・防除が図られている。セイタカアワダチソウやナルトサワギクなどのキク科の植物種は,道路のり面や路傍の空地などに侵入しやすい一方,森林内には侵入しにくい傾向にある。本報告では,土壌環境と植物の生育に着目し,ナルトサワギクに対し,改良客土(酸性・低栄養塩類型植生基材)を用いた成長抑制実験を行った結果を報告するものである。
  • 倉本 宣, 芦澤 和也, 岡田 久子
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 143-146
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    多摩川におけるカワラノギクの緊急避難的な保全措置として,多摩川永田地区にA工区を2002年に造成した。この造成工事に先立って基質を5通り用意して予備実験を行った。予備実験では実生の定着率は粒径の大きい礫を1層敷き均した条件(1)で最大で,粒径の小さい礫を含めて1層敷き均した条件(2),粒径の大きい礫を3層敷き均した条件(3)が次いでいた。本施工には(1)で大部分を施工し,一部(3)で施工し,隣接するB工区を(2)で施工した。出水による冠水を経た2009年にはB工区の一部にもカワラノギクが生育し,A工区の(3)にはカワラノギクは生育せず,周囲の(1)に生育していた。予備実験と本施工の結果には再現性のない部分があり,その工事における意味と理由について考察した。
  • 成田 瑞樹, 近藤 哲也, 中村 まい, 笠 康三郎
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 147-150
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    札幌市の地区公園においてススキやオオヨモギなどの競合植物に被圧されていた野生のスズラン個体群を回復させるための刈り取り管理方法を検討した。スズラン以外の競合植物を刈り取ることで,スズランの個体数と開花個体率は増加した。スズランが枯死し始める初冬に刈り取りを行うことでも十分な効果が認められたが,とくに「春・夏・秋・初冬」の刈り取りが有効であった。実験開始時に,被覆面積(m2)×草高(m)で求めた植物の近似的体積(植物体量)が大きく,競合関係にあったススキとオオヨモギは夏と秋の刈り取りで衰退したが,カモガヤは刈り取りによって増加した。
  • 根津 準一郎, 大澤 啓志, 勝野 武彦
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 151-154
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究では神奈川県の境川と引地川の遊水池公園において,直翅目の生息実態の把握と,特に管理強度との関係を検討した。計6 タイプの調査区を設けた中,種数が最も多かったのは境川遊水池の湿性低茎草原であり,次いで引地川遊水池の乾性高茎草原であった。また管理が行われている場所の多くでは,多数の種が確認され,その確認数も多いものであった。対照的に草刈り非実施の調査区は種数・個体数とも全般に低く,草刈り管理が直翅目の種組成に影響していると推察された。
  • 鬼丸 真光, 小島 仁志, 勝野 武彦
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 155-158
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    近年,農業形態の変化や,河川改修などの開発行為によって低湿地が急速に失われ,そこを生育適地とする動植物種の絶滅が懸念されている。その一つとしてタコノアシ(Penthorum chinense Pursh)が挙げられる。本研究ではタコノアシの既往研究で行われた管理方法(特に草刈り)の具体的な管理頻度を設定し,タコノアシの保全にどの程度の頻度で管理を行えば良いのかを調べた。結果,植生管理は過度に行うと逆にタコノアシの生育の阻害になり,2ヶ月に1回程度行えば良いことが示唆された。
  • 稲垣 栄洋, 松野 和夫, 大石 智広, 高橋 智紀, 山口 翔
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 159-162
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    斑点米カメムシの発生源となる休耕田のイネ科雑草の抑制をレンゲ,ヘアリーベッチ,クリムソンクローバー,アップルミントの被覆によって試みた。その結果,ヘアリーベッチ,クリムソンクローバー,アップルミントはイネ科雑草の発生を抑制し,斑点米カメムシの発生抑制に効果を示した。一方,レンゲは,植生被覆による雑草抑制効果は小さかったが,休耕田に入水することによりレンゲが枯死分解し,雑草の発芽を効果的に抑制した。
  • 清水 冬音, 芦澤 和也, 倉本 宣
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 163-166
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,明治大学農場予定地にて年輪解析によりホオノキの樹齢を明らかにするとともに,空中写真等の資料や農家の話から,人間活動と植生の変化がどのように進んできたかを調査した。調査したホオノキの中で最も若齢な個体は28年生,最も老齢な個体は54年生であった。ホオノキが発芽,または萌芽していた時期と,していない時期を管理の有無や空中写真などと照らし合わせると,農家による管理がある時期に発芽,萌芽したホオノキは確認できなかった。農家の管理が行われなくなると,発芽は確認できたが,時期によっては今回の調査で発芽が見られない時期もあった。
  • ―中国内蒙古自治区興和県の荒廃丘陵地を例として―
    斉藤 誠, 顧 衛, 邵 〓, 大林 直, 陳 述悦, 戴 泉玉
    2010 年 36 巻 1 号 p. 167-170
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    半乾燥地域に位置する中国内蒙古自治区興和県の荒廃丘陵地において,保育ブロック苗を用いた生態回復手法の研究を行った。6種類の広葉樹を3ヶ月間育苗し施工したところ,施工後2年目における活着率は,市場苗木の活着率が土壌厚40-50 cmの場所で21 %,20-30 cmの所では5 %であるのに対し,保育ブロック苗の6樹種の活着率は,いずれも土壌厚に関係なく95 %以上であった。また,根系形態を調査したところ保育ブロック苗の根系は,重力方向に深く伸長し,市場苗木やポット苗とは明らかに異なる根系形態を示した。このことから,半乾燥地域における保育ブロック工法の適応の可能性が認められた。
  • 大林 直, 斉藤 誠, 佐舗 宣行, 山寺 喜成, 宮崎 敏孝, 楊 喜田
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 171-174
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    黄河中流域に位置する小浪底ダム周辺の荒廃山地において,土砂流出防止を目的とし,保育ブロック工法を施工した。その結果,従来のポット苗植栽では活着率が10 %以下だったコノテガシワ(Playtcladus orientalis(L.)feanco)が,保育ブロック苗を用いたところ92 %の高い活着率を示した。また同時に,保育ブロックを用いて播種した野生のヤマモモ(Prunus dviana(Carr.)Franch)も69 %の高い活着率を示し,保育ブロック工法による荒廃山地の早期樹林化の可能性が示唆された。施工4年後の樹高伸長,根系形態などについて報告する。
  • 篠原 章宏, 米田 稔, 片岡 利仁, 尾坂 高明, 新井 貴史, 小島 玉雄
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 175-178
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    公園等の地面は,造成時の施工や踏圧により硬くなっていることが多い。硬すぎる土壌は根系の生育を阻害し,植物衰退の一因と考えられる。そこで本研究では耐踏圧材として,廃瓦破砕材に注目した。改良土壌として土と瓦を段階的に混合した土壌を提案し,その改良土壌の踏圧に対する性質や歩行者への安全性を調査した。また実際にサクラとシバを栽培し,成長量を評価した。その結果,瓦の配合比を増やすほど,弾力性が強まることが分かり,改良土壌の弾力性はアスファルトや真砂土よりも良い結果となった。またサクラの苗木やシバは真砂土と瓦の混合土壌で良い成長結果を示した。従って,瓦を用いた改良土壌が有用であると言える。
  • 吉田 麻美, 米田 稔, 片岡 利仁, 尾坂 高明, 小倉 研二, 小島 玉雄
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 179-182
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    京都府立植物園の桜園を対象として, 瓦破砕材を用いた土壌改良の有効性について検討した。まず試験的に各種土壌を充填した穴を通路上に設定し, 降雨への応答や踏圧による物理特性などの変化を追跡した。その結果, 瓦破砕材は適度な水の保持能力と水はけの良さを合わせ持っていること, 数ヶ月程度ではその効果は消えないことが明らかとなり, さらに実際に瓦破砕材を約40%(重量比)混合して実施した土壌改良でも改良前と水分保持量は変わらず, 水はけは良くなるという結果を得た。また土壌改良と同時に瓦破砕材のみを充填した道を造ったが, 土壌領域地表に難透水層が形成された場合には, この道が周囲の土壌中含水率に影響を及ぼすことが数値シミュレーションにより明らかとなった。
  • 高橋 輝昌, 越田 淳平, 長嶺 利樹, 加藤 顕
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 183-186
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    剪定枝葉を粉砕した生チップ,堆肥化作業を開始してから1ヶ月後,2ヶ月後,4ヶ月後の各試料について微細構造を電子顕微鏡で観察した。画像解析の結果,堆肥化が進むにつれチップや堆肥の表面の凹凸の数,凹凸の大きさが共に増加していた。凹凸の数や大きさが増加することから表面積が増加することが推察される。この表面積の増加が既往の研究で明らかになっている保肥力の増加にも影響していると考えられる。
  • 岩月 良介, 山本 理恵, 高橋 輝昌, 平野 義勝
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 187-190
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    都市緑地で発生する剪定枝の活用を検討する一環として,木質系廃材を主原料とする堆肥 (木質系堆肥) の水田への施用が水田土壌の化学的性質に及ぼす影響を分析し,水田土壌からのメタンフラックスの発生量を,既往の土壌改良資材と比較して分析した。木質系堆肥施用によって,土壌の全炭素濃度,陽イオン交換容量,交換性Ca,Mgが高まりやすかった。また,木質系堆肥の施用履歴の異なる3つの水田において,メタンフラックスの違いを調査した結果,メタンフラックスは木質系堆肥施用によって増加するが,他の土壌改良資材を施用した際と比較して特に大きくはならず,施用後2年目以降に減少した。
  • 辻 盛生
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 191-194
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    湿生植物による屋上緑化を行う際に,併せて創出する需要が考えられる浅水の開水面では,夏期晴天時の温度上昇が懸念される。湿生植物群落内は温度上昇抑制効果が高いことから,群落内に水を循環させることで水面部の温度上昇を抑える効果が期待できる。水路上に湿生植物を植栽した範囲と水面の範囲を設け,水を循環させて温度をモニタリングした結果,循環させない開水面に比べ,循環させた水面部の温度は最大で3.0~4.8 ℃低かった。
  • 渋谷 圭助, 中村 圭亨
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 195-198
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    都市のヒートアイランド対策や児童の健康,情操教育など,様々な背景から小学校の校庭や幼稚園・保育所の園庭芝生化が注目されている。本研究では,芝生化直後とその一年後のアンケート調査により幼稚園・保育所の職員,保護者,園児の芝生化に対する意識や維持管理の方法などの把握を試みた。その結果,園庭の芝生化に対しては概ね良好に評価され,芝生化に反対するという施設はきわめて少数であった。
  • 金 甫〓, 田代 順孝
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 199-202
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    本調査は,都市緑化方法として注目されている屋上緑化について,熱環境調査と利用者の選好度についてアンケート調査を実施した。調査の結果,植栽種類の選好度については,ハーブ類28.3%,野菜類23.9%,高木17.4%,芝生類13.0%,中木9.4%,低木8.0%の順であり,空間別選好度では芝生空間の選好が最も多かった。熱環境調査では,気温が最も高かった12時のデッキ空間が50.1 ℃で最も高く,パーゴラ空間41.3 ℃,芝生空間34.7 ℃と続いている。
  • 堀田 一樹, 木村 正典, 宮田 正信, 竹中 幸三郎
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 203-206
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    観葉植物のポトスとサンセベリアを用いて,明,暗条件下での植物のガス交換とホルムアルデヒド濃度を閉鎖系チャンバー内で測定した。その結果,ポトスでは暗期よりも明期で活発なガス交換がみられるとともに,ホルムアルデヒド濃度も明らかに低下した。一方,サンセベリアは暗期でガス交換が若干みられ,ホルムアルデヒド濃度も低下する傾向が若干みられた。以上のことから,観葉植物のホルムアルデヒド除去効果には植物のガス交換が影響していることが示された。しかし,ガス交換とは関係なくホルムアルデヒド濃度が減少していたことから,植物体への吸着の可能性が示された。
  • 堀田 一樹, 木村 正典, 宮田 正信, 竹中 幸三郎
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 207-210
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    観葉植物の室内空気汚染物質除去に関与していると思われる,植物体へ吸収効果および吸着効果との関係について,ポトスを用い,閉鎖系チャンバー内にてホルムアルデヒドの濃度を測ることにより検討した。吸着効果を,植物への水分ストレス付与による気孔閉鎖を利用し,ポトスへの吸収を抑制することで求めた。その結果,水分ストレスを付与していないポトスではホルムアルデヒド濃度は大きく減少したが,水分ストレスを付与したポトスでは対照区と比べ濃度は低下していたが,その後の変化はみられなかった。このことから,植物のホルムアルデヒド除去効果には,はじめは吸着効果の方が高いが,時間の経過と共に,吸収効果の方が高くなることが示唆された。
  • 川口 徹也, 岩崎 寛
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 211-214
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    ストレス社会の現在,特に都市域で働く人々の心身の健康を維持することが重要な課題となっている。そこで本研究では都市域で働く社員・職員に対しアンケート調査によりオフィスにおける緑に関する意識を調べ,さらに行動調査により利用の実態を調べた。その結果,アンケートではオフィスワーカーは職場への緑導入に対する期待が大きく,その目的もストレス緩和など療法的効果が期待されていることが分かった。また行動調査では緑地の空間的特性の違いによって,使い分けていることがわかった。
  • 藤崎 健一郎, 片岡 紗織, 勝野 武彦
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 215-218
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    街路樹の種類は時代によって変化している.今後の樹種選定に役立てることを目的とし,現在望まれている植栽方式や樹種について一般住民と専門家にアンケートを行った.回答は多様であり,街路樹植栽に多様性が求められているといえる.しかし,明治期には街路樹の条件は成長迅速な落葉樹とされたのに対し,今回の調査では成長の遅い樹種や常緑樹を選択する人が多いなど時代の影響を見ることができた.また専門家には高木と低木の組み合わせが好まれるのに対し,住民には高木と草花の組み合わせに人気があることや,住民に人気の高いハナミズキが専門課には評価の低いことなどの差異も見られた.適正と考える樹高や植栽間隔について住民からの数値は専門家に比べて小さめだった.
  • 中島 有美子, 吉崎 真司
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 219-222
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    沿岸域に生育する常緑広葉樹の耐潮性の程度を把握する目的で,供試苗の地上部に霧吹きで塩分を付着させ,その被害程度から耐潮性を把握する実験を行った。各種の被害の程度は,葉のネクロシスの割合および落葉の有無から被害レベルを設定することにより評価した。実験にはタブノキ・ヒメユズリハ・ヤマモモ・ヤブニッケイ・モチノキおよびクロマツを用いた。また葉内のNa+量を測定し,被害レベルとの関係を検討した。
  • 七海 絵里香, 大澤 啓志, 勝野 武彦
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 223-226
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    日本最古の歌集である万葉集には130~150種に及ぶ植物が詠まれており,これら万葉植物は古くから日本人に親しまれてきた文化的な植物と言える。今回,苗木の里3地域(川口市,稲沢市,田主丸町)における万葉植物の出荷本数または生産本数の集計を行なった。その結果,現在でも利用される万葉植物は多く,地域ごとに差があるものの,樹木の総出荷・生産よりも万葉植物の出荷・生産は比較的安定した供給があることが示された。
  • 廉 晟振
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 227-230
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    多摩ニュータウン(貝取地区)に,歩行者専用道路を活かし,緑をネットワーク化した空間における住民の生活動線としての機能について地区住民(144 通)を対象に駅の利用,買い物 ,散歩の三つの生活に使われる道のりを地図上で把握した。各道のりに対する満足度とその要因を明らかにすることで歩行空間を活かした緑のネットワーク形成における生活動線としての機能やその有用性について考察を行った。
  • 相澤 章仁, 田代 順孝
    原稿種別: 技術報告
    2010 年 36 巻 1 号 p. 231-234
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/16
    ジャーナル フリー
    根木内歴史公園(千葉県松戸市)内の湿地植生を保全・管理していくために,住民参加による植生モニタリングを行った。毎月一回,咲いている花を区域ごとに記録していく“花ごよみ調査”と草刈りの効果を実験的に検証する“草刈り調査”の二つの調査を行い,ゾーンごとの植生の傾向と,草刈りによる効果について検討した。花ごよみ調査からは,各ゾーンに特異的に生育する在来種がそれぞれあること,全体的にはひとつのゾーンに依存した種構成の入れ子構造があることがわかった。草刈り調査からはオギには夏刈りの効果があるが,ヨシには効果がないこと,オオイヌタデなど草刈り時期によって大きな影響を受ける種があることが明らかとなった。
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