抄録
兵庫県里山域のニホンジカ生息地での植生回復の可能性を把握するため,2008 年 3 月の間伐後に設置した植生保護柵 5 箇所の内外で,柵設置後 3 年間の樹木種の種子,実生および稚樹の動態を調査した。柵設置年と翌年の 10 月時点の当年生実生数は,5 箇所中 3 箇所で柵外が有意に少なく,翌々年 10 月の稚樹数は,5 箇所すべてで柵外が少なかった。種子数は,柵設置直後の 4 月は柵内外で差がなかったが,翌年 4 月は柵外 2 箇所で有意に少なく,土砂移動量は柵外で多かった。以上のことから,シカの生息が採食圧を高めて実生や稚樹の動態に影響を与えているとともに,低い植被とシカの歩行による土砂移動が種子の動態に影響を与え,植生回復の可能性を低下させていることが示唆された。