抄録
海岸林は古くから防風や防潮の機能を有し,人々の生活を保全する役割を担ってきた。東日本大震災の津波による被害に対しても,海岸林が減災効果をもたらしたことが報告されている。しかし,海岸林の保健休養機能に関する研究は,景観印象について評価した研究例があるものの,生理的・心理的効果に言及した研究は少ない。そこで,本研究では,生理指標及び心理指標を用いて,海岸林の癒し効果について検証するとともに,近接する海岸についても同様に調査し比較した。その結果,男性は海岸林と海岸の両方で生理的な鎮静効果がみられたが,女性は海岸林のみで効果があることが明らかになった。また,海岸林と海岸の両方で男女ともに気分の改善効果が確認された。さらに,海岸林は静かで鎮静的な空間であると評価され,海岸は明るく開放的な空間であると評価された。