抄録
多摩川の河川敷で繁茂し,分布拡大しているハリエンジュの結実に対する訪花昆虫の役割を明らかにするために,昆虫の訪花頻度の調査と,袋かけおよび人工受粉による受粉実験を行った。30 秒間隔のインターバル撮影で撮影された訪花昆虫の約90%はセイヨウミツバチであった。セイヨウミツバチが撮影された回数とビデオの連続撮影で写った時間とには,高い決定係数を示す正の相関関係が認められ,インターバル撮影による撮影回数は訪花昆虫の訪花時間の推定に利用可能であった。袋かけ処理や自家受粉処理を行った花序ではほとんど結実しなかったことから,ハリエンジュは自家不和合性が強いことがわかった。しかし,セイヨウミツバチの撮影回数と結実率との間には相関が認められず,昆虫の訪花を受けても結実率が低かったことから,結実には昆虫の訪花頻度以外の要因も関係していると考えられた。