抄録
西表島に生育するマングローブ (オヒルギ,ヤエヤマヒルギ,マヤプシキ,ヒルギダマシ) の葉内浸透調節物質と陽イオン濃度を調査し,(1) 河口に生育する4 種の種間比較,(2) それらの日中と夜間の比較,および (3) 河岸に生育するオヒルギとヤエヤマヒルギ2 種の比較を行った。後良川河口の4 種で,葉内 Na+:K+ 比と糖類・糖アルコール濃度との明らかな相関は認められなかった。日中の葉の総可溶性糖濃度はヤエヤマヒルギとヒルギダマシで夜間よりも上昇した。河口~中流に分布するオヒルギと,中流~河口に分布するヤエヤマヒルギの浸透調節物質濃度と河川水中の塩分,pH,溶存酸素濃度との間に強い相関が示されたが,葉内 Na+:K+ 比との間に強い相関は認められなかった。以上の結果から,各マングローブの浸透調節物質の濃度は,日中と夜間での変化を示す樹種がある一方,分布域内の葉内浸透調節物質の濃度に明らかな差異がないことがわかった。