抄録
樹木の開芽フェノロジーは樹木健全性評価の指標として有効とされるが,多個体データによる検討はされていない。奈良県吉野山のヤマザクラ樹林において4 集団102 個体を対象に,花芽と葉芽の開芽フェノロジーならびに樹木活力度を調べた。ほぼ同時期に新規に植栽された集団間の比較によると,出葉日,出蕾日,開葉日,開花日,展葉日,満開日の標準偏差がより大きい集団で生育状況が不良傾向にあることが示唆された。樹木の開芽フェノロジーを指標化することで樹木集団の生育状態を評価できる可能性があり,今後は定量的な生育指標との比較や開芽フェノロジーの客観的な評価手法を検討していく必要がある。