抄録
シカが高密度に生息する地域に開設されている林道の切土法面において,シカ不嗜好性植物を使用した吹付緑化試験を行い,植物の被覆状況と土砂流出量について,牧草を主体とした従来の吹付工と比較した。吹付工は1 月に実施したが,シカ不嗜好性植物区では,食害はなく,冬季は夏緑性であるタケニグサの地上部の枯死による被覆率の低下がみられたものの,翌春には,新葉の展開により被覆率が回復した。一方,従来の吹付工では,深刻な食害を受け吹付当年の秋以降に急激に被覆率が低下した。土砂流出量については,翌年の春以降に試験区間で大きな差がみられ,不嗜好性植物区では土砂流出量が小さかった。以上のことから,シカが多い地域での,不嗜好性植物による吹付緑化工の有効性が確認できた。