日本緑化工学会誌
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特集「シカの採食圧による植生被害防除と回復」 シカの過採食による森林と渓流生態系の相互作用の変化
境 優
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2013 年 39 巻 2 号 p. 248-255

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抄録
近年,シカの過採食によって劇的に森林の下層植生が衰退している。本来ならば夏期には渓流を覆うように繁茂する渓畔植生も,シカ高密度地域では壊滅状態に追いやられている。河畔植生は,林床を覆って土壌の流出を抑制したり,訪花昆虫,食植性昆虫などを渓流に供給したりすることで,森林と渓流生態系をつなぐ重要な役割を果たしている。土壌侵食の活発化は,無機物的な側面では,土砂流入による河床改変を引き起こし,底生動物群集の多様性低下を招く。一方有機物的な側面では,森林由来の他生性有機物が渓流に過剰に流入することで渓流生態系内の栄養循環に変化をもたらす可能性がある。前者のような土砂の堆積プロセスは河川地形に応じて空間的に不均質であるため,シカによる土砂流出が渓流生態系に及ぼす影響の評価には,河川地形学や森林水文学など生態学に囚われない学際的な視点が重要である。一方,渓畔植生から渓流への陸生動物の供給がシカの過採食によって変化すると,森林-渓流生態系のつながりを通して魚類も含めた生態系内の栄養循環のバランスが崩れることが示唆された。
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